第10話 アランという少年
セルティスとホークは、人影も少なく静かな村にやってきた。
周囲を見ても、人の気配がない。
セルティスが警戒しながら歩いていると、狼のような姿をしたモンスターが襲いかかってきた。
セルティスは素早く後退した。
その後、すぐにラグナロクでモンスターを一撃した。
ホークにもモンスターが襲い掛かる。
やはり、狼の姿をしている。
ホークはダガーでモンスターを突き刺し、倒していく。
セルティスとホークはモンスターを倒すことに集中していて、人の気配に気が付かなかった。
「お主、剣士か」
老人が急にセルティスに声をかけてきた。セルティスは驚愕する。全く気配がしなかった。
「いつのまに!」
ホークも気配には気が付かなかったようだ。
老人はニヤリと笑う。
「ここは忍者の村。だから、この村の人はいつも気配を消すことができる。敵に感づかれないようにな」
ホークは呆然とした。
「忍者か。気配を消せるようになれば、誰にも気づかれずに秘宝も奪えるかもな」
ボソッと呟いた。
セルティスは軽く小突く。
「盗人、何考えてるんだ」
ホークはムッとしながらも、悪戯な笑みを浮かべた。
「気配消すことができれば、セルティスにあんなことやこんなこともできるしな」
セルティスは、膝の裏を強く蹴った。
「スケベが」
ホークは痛みに耐えながらも、真面目に言い返した。
「冗談に決まってるだろ!」
そんなやりとりを見ていた老人は、一言呟いて去っていく。
「若いっていいのぅ」
セルティスはホークを睨みつけている。
「本当に殴るぞ」
ドスの効いた声で言う。
しかし、ホークはニヤニヤしている。
「なぁ、少し、休憩しようぜ。あそこに酒場がある」
セルティスは勝手にしろと言いたかったが、日も落ちてきたので休むことにした。
酒場では、仕事を終えた忍者達が、ハメを外している。
セルティスはソフトドリンクでひとり、のんびりとする……はずだったが、ホークがいた。
「セルティス、酒飲まないのか?」
ホークが聞くとセルティスは一息ついた。
「飲めない」
ホークはかなり驚いている。
「意外。見た目はめっちゃ、飲みそうなのにな」
セルティスは適当に相槌を打った。
ホークに付き合うのが面倒になった。
セルティスがソフトドリンクを口にしたとき、思わぬことを言われて吹き出した。
「何、言ってんだ!」
セルティスは咳き込んだ。
酒場のマスターが変なことを言い出すから、こんなことになったのだ。
マスターはニヤリと笑って言った。
「お2人さん、仲がいいね。愛し合っているのかい?」
ホークはニヤニヤしている。
「振り向いてくれないんだよなー」
なんて、マスターに言っている。
セルティスはホークを無視して片付ける。
すると、マスターがボソッと言った。
「なぁ、女剣士さん、ひとつ頼まれてくれないかな?」
セルティスは頷く。
すると、マスターは話し始めた。
「アランという18歳の少年がいてな」
マスターはフーッと息を吐く。
そのアランという少年が、まだ8歳の時に両親が四天王と戦って亡くなった。
当時、両親は犠牲になったが、四天王を封じ込めたこともあり、アランはホッとしていた。
ところが、四天王の復活を聞いて、両親がどうして犠牲になったのか、真相を知りたいと言い出した。
アランはまだ未熟で戦い方もわかっていない状況で四天王を探して突き止めると飛び出してしまった。
だから、すごく心配なのだとか。
セルティスに様子を見てきてほしいとのことだった。
セルティスは考えたが、首を縦に振った。
その時、酔った状態のホークが何か言って、セルティスの肩に頭を預けた。
「おいっ、何してんだっ!!」
どれだけ飲んだのか、かなり酔っていて酒臭い。
セルティスはホークを離そうとするが、すぐにセルティスの肩にホークが寄りかかる。
「メナ……守ってやれなくてごめん」
ホークの寝言。
セルティスは寝言を聞いて、ホークの心の中が見えたような気がした。
おどけて見せているが、本心はかなり淋しいのだろう。
それだけ、メナという女性を愛していた。
そう思ったら、無理にホークを離そうという気にはなれなかった。
セルティスはお金を払うと、マスターにアランのことも見ておくと伝えた。
その後は、酔って寝てしまったホークの腕をセルティス自身の肩に回し、ホテルへと運んだ。
そして、やる必要はないような気がするが、布団をかけてやった。セルティスの優しさだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます