第7話「未知との遭遇」
-アルバラド軍本陣-
ワイナ「むっ、川からマプチェどもがやってきます。」
先住民の大男が、スペイン人の男エレロに話しかけた。
エレロ「何と?
彼らは本当に気でも狂ってるのですか?」
ピジョルコ「気づかれたか。構わん進むぞ。
まずはあの中洲を目指せ。」
ピジョルコ軍はこちらと対岸の敵本陣の中継地点の中洲を目指す事にした。
ピジョルコ「川滑兵よ、先に拠点の確保に向い、相手に圧をかけよ!」
川滑兵「ハッ!」
ピジョルコ軍から数人の兵士が物凄い勢いで、中洲へ向かっていく。
エレロ「なんたる機動力でしょう。
彼らは川を滑る様にしてこちらへ向かって来ますよ。」
ピジョルコの川滑兵は、岸から助走をつけて川へ次々と進入してゆく。
まるで現代のサーフィンでもする様なフォームで川を滑り、物凄い勢いで中洲へ迫っている。
ワイナ「それがマプチェでございます。
長年私どもも手を焼いております。」
ワイナ「奴らは川の浅い場所を熟知しており、そこをうまく滑りながら進んでいるのです。」
エレロ「そんな事が可能なのですか?
やはり国王の御触れ通り、彼らは人ではないのですね。」
ワイナ「・・・。しかし、奴らは火器というものを知りません。
こちらまでたどり着くことは、まずないでしょう。」
エレロ「そうですか、所詮は獣ですね。
火器を準備してください。
彼らが中洲に上陸したら、一気に放って下さい。」
エレロ兵「ハッ!」
川滑兵「よし中洲に着い・・」
ドッ!ドドンッ!!
ピジョルコ「これは・・
晴天だというのに雷が鳴っておる。
奴らは天候まで操るのか?」
エレロは立ち止まっている一際大柄の者を目に捉えた。
エレロ「あの大柄な方が、あちらの軍を率いているようですね。クレブリナ砲を。」
エレロ兵は一際長い大砲に球をこめ出した。
その刹那
タイエルが斧を投げた。
エレロ兵「ギャー、カレブリナがぁ。」
ワイナ「なんたる膂力・・あれは・・北の奴ではない・・」
ワイナが言葉を言い終えるより、早くエレロが激昂しながら口を開いた。
エレロ「な、なんだと!
調子こいたお猿さんたちが!!」
今まで穏やかな口調で話してたエレロが、節々に品性のない言葉が混ざりながら、口汚く話し始めた。
エレロ「せ、せっかくイングランド商人から苦労して手に入れた、カレブリナが。
私の財産が・・」
かと思うとエレロは泣き崩れる様に呟いたり、怒りを露わにしたりで、せわしなく感情を吐露している。
エレロ「ぬうぅ、猿どもの手足から臓物、爪、髪の毛、目玉、脳みそに至るまで、全て売り飛ばして金に変えてやる!!」
ワイナは動じる事なく、エレロの傍らでただ直立不動でいる。
エレロ「かね、かね、おーかーねぇ・・」
エレロは呪文の様に、血走った目で呟いている。
ピジョルコ「タイエル殿、かたじけない。」
タイエルはそっと頷いた。
ピジョルコ「しかし、得体の知れぬ攻撃よ。
我らの機動力で辿り着けなくもないが、悪戯に仲間を失いかねぬな。」
ヤマイ「兄者、ここは私の隊だけでも行かせくれ。」
ピジョルコ「駄目だ、妹よ。
この相手はもはやこの規模で対処する話ではない。
撤退だ、すぐにミチマ様の援軍に行くぞ。」
-アルバラド軍右翼-
ロレンツォ「だいぶ相手も減ってきましたね。」
カスティニャダ「ああ、ただこちらのヤナクナも大分いかれた。」
-ピクンチェ本陣-
アルバラド騎兵「準備が整いました。」
アルバラド「よし、一気に畳み掛けるぞ。」
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