第14話 波乱の昼休み
昼休み。
「たーきと! お昼ご飯食べよう!」
四限目の授業が終わるや否や、大島さんが満面の笑顔で誘ってきた。
「(夏海ちゃんに昼飯誘ってもらってるぞ)」
「(マジでどういう関係?)」
「(悪目立ちさせたお詫びとか?)」
「(夏海ちゃん、優しすぎでしょ)」
「(はぁはぁ、拙者の夏海たんから離れろ!)」
当然、クラスメイト達は不思議がる。
入学直後の悪目立ち以来、俺は教室でなりを潜めていた。昼休みもすぐに退出していたが、今日は杉野さんを待っていた。そこを捕まえられてしまったのだ。
当然、注目が集まる。皆、クラスのアイドルの動向が気になるらしく視線は俺達に釘付けだ。
「一緒にお昼、ですか……?」
「そうだよ。だって滝人ってば、昼休みになると一人でどっか行っちゃうんだもん。お昼一緒に食べようよ〜」
「むぅ」っと唇を尖らせる大島さん。
どうやら大島さんは俺とランチの機会をずっと窺ってたらしい。彼女は俺と青春すると憚りなく言ってたから期待してたのだろう。そう思うと楽しみを奪ったみたいで心苦しい。
だが、すぐにはイエスと言いづらい。
「(まさか受けるのか?)」
「(根暗のくせにでしゃばりやがって)」
「(フゴフゴ!)」
クラスメイトから剣呑な視線を感じる。大島さんとランチしたい人なんてごまんといる。そんな彼女の方からランチを誘ってもらえる俺は嫉妬の的であった。
まずい、これを受ければさらにヘイトが溜まる。これ以上クラスメイトから顰蹙を買えば平和な高校生活がますます遠のく。ここはやんわりと断りを入れよう。
「えっと、大島さん、また今度にしよっか?」
「えぇ〜。私、滝人ともっとお話ししたいのになぁ……」
「(あいつ、断りやがったぞ!)」
「(拙者の大島さんを悲しませるなんて万死に値する!)」
「(ブヒブヒ!)」
どうしろと!?
お前らのお望み通り断ってやったのにむしろヘイトが溜まるのかよ!?
「おい、夏海! そんなやつじゃなくて俺達と飯食おうぜ」
俺が対応に苦慮していると乱暴な言葉が飛んできた。その声を聞いて思わず奥歯を噛み締める。
発言者の名前は渋谷
そんな渋谷はまさに俺とは対極の存在で、一番苦手なタイプ。
「ちょっと、修、そんなやつとは何よ! どうしてそんな酷いこと言うの!?」
しかし大島さんはそんな渋谷に媚びる素振りは無く、むしろあまりの言い草に噛みついた。すると渋谷は肝が潰れたような顔をする。彼にとっては何気ない一言で、まさか顰蹙を買うとは予想しなかったのだろう。
「そんな怒ることないだろ……」
「滝人に謝って!」
「わ、分かったって。石見、悪かったな」
「いいよ、気にしてない」
大島さんにたじたじな渋谷は気色の悪い愛想笑いを浮かべて詫びてきた。それを俺は鉄面皮で受け流す。
「ほら、夏海、早く弁当食おうぜ」
「いや。修とは食べない」
未来の彼氏を貶された大島さんは完全にヘソを曲げてしまった。戸惑う渋谷は諸悪の根源であるかのごとく俺を睨んだ。
自業自得だろ。
俺は取りなすこともせず、戸惑う渋谷少年を冷淡に見つめた。
やっぱりこいつは嫌いだ。
「修、今日の夏海は別の人と食べたい気分なんだよ。諦めてこっちおいでよ」
猫撫で声で渋谷を宥めるのは円城愛羅という女子生徒。大島さんには敵わないが円城もかなりの美少女である。だがこの子のことも嫌いだ。
円城がとりなしに入ったせいでクラスメイトの視線がますます集まる。
さて、困った状況になった。にわかに起こったクラスの一軍メンバーによるいざこざ。その台風の目は俺。この空気、どうにかせねば……。えぇい、ままよ!
「大島さん、せっかくだからお誘いに乗らせてもらうよ。天気も良いし、外で食べようか」
「うん、行こう!」
悪目立ちしてる俺に出来るのは逃げることだけ。もっともらしい受け答えで戦線を離脱するのだった。逃げるは恥だが役にたつ、ってな。
もちろん杉野さんのことも忘れてない。去り際、杉野さんにアイコンタクトを送り、合流を示し合わせる。
「(あ、まんまとランチに誘いやがった!)」
「(俺の大島さんを返せ!)」
「(ブヒィィィ!)」
そんな一悶着を経てミラカノとのランチが幕を開ける。
どうしてこうドタバタするんだろうか……。
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