第128話 勉強会4
お昼を食べた俺たちは勉強会を再開することにする。上野さんが言った。
「さてと、不知火との話も片付いたし、午後は陽春先輩を教えることに集中しますね」
「うん、お願い」
上野さん、すっかり明るい表情に戻ったな。陽春も上野さんに近づいてまた二人で勉強し始めた。達樹は笹川さんとべったりだ。俺は少しうらやましくなりながらも一人で勉強し始めた。不知火も同じだ。
1時間もすると疲れてくる。もうそろそろ3時という時間になり、一人で勉強する俺は少し眠くなってきた。すると、陽春がそれに気がつく。
「和人、休憩する?」
「そうだな……」
「よし、じゃあみんなで人狼ゲームやろう!」
やっぱり陽春は人狼をやるタイミングを狙ってたか。
「やらないから……達樹、そろそろじゃない?」
笹川さんが言った。
「ん? ああ、あれか。よし! みんな、ちょっと休憩しよう!」
達樹が部屋を出て行く。そして、何か箱を持って帰ってきた。達樹が箱を置くと、笹川さんが言った。
「さあ、どうぞ」
これは……高級アイス6個入りの箱だ。達樹が笹川さんに怒られて罰で買わされたやつか。
「うわあ、ウチ、抹茶!」
陽春が言う。
「陽春先輩、ずるいです。私も抹茶希望です」
「じゃあ、人狼で決めよう」
「どうやって人狼で決めるんですか……ここはじゃんけんですね」
「よし、じゃんけんね! じゃんけん、ぽい!……ま、負けた」
「いただきます」
上野さんが抹茶をもらっていた。陽春はバニラにしたようだ。俺は何でもいいので余り物をもらった。
「うん、おいしい!」
陽春が言う。
「おいしいですね。達樹先輩、ありがとうございます」
上野さんが言った。
「まあ、これは罰ゲームだし」
「罰ゲーム?」
「勝手に楓に会いに行った罰よ」
笹川さんが言った。
「ああ、なるほど……そういえば、お二人って付き合いだしてある程度経ちましたよね」
上野さんが聞く。
「まあ、そうだね」
達樹が言う。
「私、陽春先輩たちがどこまで進んでるかは正確に知ってるんですが――」
なんで正確に知ってるんだよ。
「お二人ってどこまで進んでるんですか?」
「いくら雫ちゃんでもそれは言えないな」
達樹が言った。
「じゃあ……キス、しました?」
「え!?」
達樹がそう言い、笹川さんも意味深な顔をしている。これは……
「あー、結構進んでますね」
上野さんが言った。
「嘘……理子たちに抜かれちゃった?」
陽春が言う。
「陽春たちはゆっくりでいいんだよ」
笹川さんが言った。ということは達樹たちは早くてもいいのか。
「俺たちだって、仲良くなってからの時間は和人達と変わらないからな。そりゃ、キスだってするよ」
達樹が言う。
「俺たちはしてないけどな」
「お前がヘタレだからだろ」
「まあ、そうだけど……」
俺は沈み込んでしまった。すると、陽春が俺の頭をなでる。
「和人はそういうのは慎重なタイプなんだから。そういうところがいいんだよ」
陽春が言ってくれて俺は少しほっとした。
「あれ? 昨日、もうそろそろ……って言ってませんでしたっけ?」
上野さんが言う。昨日お泊まりしていろいろ話したのか。
「雫ちゃん! ウチも言いたいことあるけどいいの?」
「……すみません」
上野さんは陽春に頭を下げた。これは珍しい。上野さんもバラされたくないことを陽春に話したようだ。
「うん、よろしい」
陽春が偉そうに言った。
それにしても、やっぱり陽春もそろそろ進みたいって思っているのか。俺も心を決めなきゃ。
「陽春」
「何?」
「期末試験、赤点なかったら二人でお祝いしよう」
「二人で?」
「うん。二人で。あのときの続きをしよう」
「そ、そうだね……」
「赤点無かったらだぞ」
「わ、わかった! 雫ちゃん! お願い!」
「わかりました。責任重大ですね」
上野さんは陽春に教えるのにより熱が入ったようだった。
結局夕方5時ぐらいまで勉強会は続いた。陽春はかなり疲れていたようだ。
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