第81話 立夏の謝罪
翌日の朝、俺の席に立夏さん、冬美さんが来た。
「和人君、私、昨日は取り乱しちゃったみたいで……」
立夏さんが言う。
「あ、うん……何かいつもと違ったね」
「ごめんなさい、私、ちょっと恐い目に遭ったから……」
「そうだったよね、俺は気にしてないから」
「う、うん……忘れてくれると……」
「わ、わかった」
「おっはようございまーす!」
そこに陽春がやってきた。
「おはよう、ウチの彼氏!」
「おはよう、俺の彼女」
「おはよう、立夏さん、冬美さん!」
陽春はいつも通りだ。
「おはよう、陽春ちゃん。あの……昨日はごめんなさい。私、どうかしてたわ」
「昨日? ああ、昼休みね。立夏さん、いつもと違う感じで私、焦っちゃったよ」
「ごめんね……あれは――」
「ついに本気出してきたって思って」
「そ、そうじゃないの」
「違うの? でも、可愛かったなあ、あのときの立夏さん」
「い、言わないで」
「『和人くーん』って、可愛かった!」
「だから言わないでって」
恥ずかしがる立夏さんをここぞとばかり陽春が攻める。
「まあ、昨日は立夏が悪いから仕方ないね。ときどきああなるのよ、この子」
冬美さんが言う。
「そうなの?」
「うん。ちょっと精神的に追い詰められたときにああなるから。一時的だから許してやって」
「ご、ごめんなさい」
冬美さんの言葉に立夏さんが謝る。
「別に謝らなくていいよ! すごーく、可愛かったし!」
陽春はあっけらかんと言った。は昨日は結構怒っていたような気がするが……。
「もう、陽春ちゃん、意地悪なんだから」
「ふふふ、立夏さん、かーわいい」
「はいはい、今回は立夏の負けね」
冬美さんが言う。
「いっつも負けてる気がするけど……」
そう言って立夏さんと冬美さんは自分の席に向かった。
「でも、よかったあ。あれが一時的なやつで」
陽春が言う。
「そうだな。何かいつもと違って恐かったし」
「そんなこと言って。和人もまんざらじゃなかったでしょ」
「そ、そんなことないし」
「嘘ばっかり。顔がデレっとしてたよ」
「それは嘘だろ」
「ほんとだよ、いつもの立夏さんに対する態度と違ったし。だから焦ったんだもん」
「いや、心配になっただけだよ」
「ふーん、ならいいけど。私もああいうのやってあげようか。和人くーんって」
「やめろよ、俺はいつもの陽春が好きだな」
「それはそれで嬉しいけど……でも、何かやって欲しかったらいつでも言ってね!」
「わ、わかった」
「なんでもやってあげるから」
「あんまり大きな声でそういうこと言うなよ」
ここは朝の教室だ。
「あ、そうだね。でも、ほんとだからね」
「わかった、わかった」
陽春は自分の席に向かった。
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