第33話 陽春の家
バスセンターでの時間はあっという間にすぎ、そろそろ陽春の家に向かうことになった。
俺たちは電車に乗り熊本駅に向かう。そこから降りて陽春の家に向かう。
「えへへ、ここで和人、告白したよね」
途中の
「そうだけど、改めて言われると恥ずかしくなるな」
「ふふっ。大好き!」
また、陽春が俺の腕にしがみついた。
「家が近づいたら離せよ」
「なんでよ、彼女でしょ」
「親御さんに見られたら恥ずかしいだろ」
「ウチは大丈夫だから」
結局そのまま陽春の家に到着してしまった。
「ここだよ!」
陽春の家は一軒家で、そこそこ広い庭もある。
「入って入って!」
陽春が俺を玄関に引っ張っていく。
「たっだいまー!」
陽春が大声を出しながら玄関を開けた
「はいはい、おかえり。もう興奮しちゃって」
そう言いながら出てきたのは、おそらく陽春のお母さんだろう。かなり美人だ。
「は、初めまして。陽春さんとおつきあいさせてもらっている櫻井和人です」
俺は挨拶するのも緊張で必死だった。
「あなたが櫻井君ね。陽春からいつも聞いてるわよ。私は母の奈津子よ。さあ、遠慮無く上がって」
「お、お邪魔します」
俺は陽春の家に上がり、リビングに通された。すると、そこには2人の人物が座っていた。
「は、初めまして。櫻井和人です」
「おー、君が櫻井君か。陽春の父の君弘だ」
「櫻井君、よろしくー。姉の亜紀だよ」
「よ、よろしくお願いします」
陽春にはお姉さんが居たんだな。あまり似ていないように見える。髪は黒髪ロングだし、そんなに元気娘感は無い。むしろ、清楚系という感じか。
「それにしても陽春に彼氏が出来るとはねえ。こんなに子どもなのに」
「子どもじゃ無いから!」
「ほら、子どもっぽいでしょ」
お姉さんが陽春をからかう。
「ね、学校での陽春はどんな感じなの?」
「えっと……元気で、あとは声が大きいです」
「なんだ、全然変わらないね」
「はい、陽春さんはいつも明るくて俺も元気をもらってます」
陽春が少し照れている。
「陽春! 少し手伝って」
「はーい! お姉ちゃんもお父さんも和人に変なこと言っちゃだめだからね」
そう言って、陽春は夕食の手伝いに行った。
少し話を聞いてみると、お姉さんは4歳差で今は大学生。今は家を出て一人暮らしをしているが、今日は帰ってきているそうだ。それが陽春が言ってた『家族と過ごす日』ということだろう。
「櫻井君は大人しいね」
「は、はい。いわゆる陰キャですかね」
「陰キャって。ハハハ!」
お姉さんが何がツボに入ったのか、笑っていた。
「陽春とは真逆だなあ」
お父さんが言う。
「す、すみません」
「謝らなくてもいいよ。まあ、
「あー、陽春はブラコンだし」
季彦とは前に言っていた研究者のお兄さんだろう。陽春は三兄妹の末っ子なんだな。
「何か言った?」
陽春がこちらに声を掛けてくる。
「櫻井君が季彦と似てるって話し」
お姉さんが大声で返した。この人も結構大きな声だ。
「だから、変なこと言わないでよね!」
陽春が一段と大きな声を出してキッチンに戻っていった。
「季彦のことは聞いてる?」
お姉さんが俺に言う。
「あ、少しだけ。研究者の人だと……」
「うん、そう。大人しくて君と似てるかもね。末っ子の陽春をいつも甘やかしていたから陽春はお兄ちゃん子なんだ」
「そうでしたか。一度会ってみたいですね」
「今は東京に居るからね。帰ってくるのは正月ぐらい」
「そうですか」
陽春は寂しいだろうな。
「正月まで交際が続いてたらまたうちに来てね」
お姉さんが意地悪く言う。
「は、はい。頑張ります」
俺はもちろん、交際を続けるつもりだ。
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