第30話 皇子視点 婚約を認めてもらおうと両親と掛け合いましたが、うまくいきませんでした

「父上、どういうことですか?

何故、俺とリナの婚約が認められないんです」

俺は父に食って掛かっていた。


「何を言っているのだ。エルヴィン。お前は帝国の第一皇子ではないか。その相手が亡国の王女などあり得ないではないか」

「そうよ。エルヴィン。貴方にはもっとふさわしいものがいるわ」

父に次いで母まで言って来た。


「何を仰っているのですか? 俺はリナの両親に一年間も匿ってもらっていたんです。その恩に報います」

「何を言うんだ。恩義など、まだ王国が存在すればその可能性もあったが」

「そうよ。今はハウゼンは存在すらしていないではないの」

俺の言葉に両親がムカつく事を言ってくれた。


「何を言っているのですか? エンゲルの動きがおかしいのは前もって判らなかったのですか? 判っていれば援軍さえ出せば、まだ、ハウゼンは残っていたでしょう」

「無茶を言うな。我が特務でも掴み切れなかったのだ。それだけエンゲルの動きが隠密性に優れていたのだ」

「そうよ。エルヴィン。国を取られたという事はカリーナ達にも油断があったのよ」

俺の疑問に両親はそう答えてくれたが、普通大軍の動きは特務が掴んでいなければならなかった。俺は特務を鍛え直す必要を感じた。


「たとえ、事前に判っていなくても、侵攻を掴んだ段階で、援軍は出せたはずです。何故出さなかったのですか?」

俺は当然の事をきいていた。


「それはお名前らの主力が北方の反乱で手いっぱいだったからな」

「我が軍以外にも帝国には多くの軍があるでしょう。三個師団位を送ればなんとかなったはずです」

「そうは言っても外務が反対してだな」

「外務は関係ないでしょう。帝国の威信の問題です。軍務は援軍を出そうと言ったそうではないですか? 何故援軍を出さなかったのです」

「対岸に援軍を出しても採算が悪いと財務が反対してだな」

父は更に出さなかった言い訳をしてきた。

「帝国の威信はどうしたのですか? 同盟国が攻められてそれを助けなかったという事は帝国の恥ですよ」

俺が言うと、

「エルヴィン、帝国の恥じたとは何ですか? 陛下は帝国全体の事を考えられて」

「帝国全体の事を考えるなら、ここは絶対に出征すべきだったのです」

「えらく、ハウゼンの事を気にするのね。あの女の色香にやられたの?」

母が言ってくれた。


「何を言っているのですか? リナは関係はありません」

俺は言いきった。

「関係ないことはないでしょう。関係ないならば、あなたのお相手は他の子にしなさい」

「何を言っているのですか? 俺はリナと結婚すると剣聖の剣に誓ったのです。絶対にやめませんから」

俺は二人に宣言したのだ。


「な、何を言っているのです。あなたまでカリーナの娘に毒されたの?」

「何を言っているのですか? 昔、カリーナの母に想い人を取られたからってその言い方は無いでしょう」

「な、何ですって! 私があの女に取られたですって。誰に聞いたのよ?」

「みんな知っていますよ。我が国の侍女らもね」

「あの女ね。そんなでたらめを言うなんて」

俺の言葉を母は全く聞いていなかった。

「とにかく、俺はリナと結婚しますから」

「絶対に許しませんからね。あんな性悪女。絶対に許さないわ」

「いや、母上リナは性悪女なんかじゃないですよ」

「騙されている男はみんなそういうのよ」

「自分がカリーナ王妃に取られたからって、その娘まで悪く言うのは止めてください」

「何ですって!」

「まあ、お前、そこまで言わなくても」

父が母を抑えようとしてくれた。

「あなたこそ、あの女に首ったけだったじゃない」

「何を言うんだ。俺は君ほどには……」

父の言葉は逆効果だったみたいで、いきり立った母を静まらせるのに大変でその日はお開きになった。

リナはもうぐっすり眠っていた。

俺はその寝顔に明日こそはと誓ったのだ。


しかし、その翌日も俺と両親の言い合いは妥協点を見つけられないまま、延々に続いたのだ。





「リナ! もう疲れた」

俺は翌日の夜遅くにリナの部屋を訪れると、リナに抱きついたのだ。

翌日も両親とやり合ったが、全くらちがあかなかった。


でも、リナの体は柔らかかった。

思いっきり抱きつくと抱き返してきた。

本当に癒やされる。

そう言えば昔はリナに頭を撫で撫でしてもらっていた。

それを言うと、リナは俺が背が高くて届かないと言い出した。


仕方無しにリナの前に頭を下げると

「いい子、いい子」

と頭を撫で撫でしてくれた。

めちゃくちゃ癒やされる。


そして、その可愛い仕草にぐっと来て俺はリナをその場に押し倒してしまったのだ。

ベッドの上に……


そのまま思いを遂げて既成事実を作るかとも思ったのだが、


「ウホンウホン」

ノーラが咳払いをしてくれたのだ。

こんなときくらい見逃してくれてもいいのに!

ノーラは結婚するまではダメだと言ってくれたのだ。


俺は仕方無しに、リナの唇を奪った。

リナの唇はとても甘酸っぱかった。

そのまま、唇を貪るように舌を絡める。

リナが少し抵抗してきたが、強引に抱きしめるとその抵抗が弱まった。

俺はそれこそ、このまま押し倒したかったが、それはノーラがいる限り許されることはない。


仕方無しに、リナを離すと、リナはベッドに潜り込んでくれたのだ。

そのまま俺も潜り込みたかったが、そうするわけにも行かず、リナにお休みのキスをする。


そのままディープキスに雪崩込みそうになって、俺は必死に自重したのだ。


明日こそは絶対に両親の許可を取ってやると心に決めたのだ。


でも、その前に母があんな行動をするとは俺は思ってもいなかったのだ。

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