イヴの冒険
Yuuki
第1章 旅立ち
第1話 プロローグ
気づいたらそこには見たこともない光景が映っていた。寝転がっているという感覚はあるためベッドにいるというのは間違いないのだろう。視線を左右に動かすとベッドのすぐ横から赤毛をした大柄な顎髭を蓄えた知らない男性が一人こちらを覗き込むように近づいてきた。その男性は何やらすごく嬉しそうにしているのが見て取れる。
…何かおかしい
事を遡ると、私は昨日学校から帰り、夜ご飯を食べ、お風呂に入り、宿題をして、友達と夜遅くまで今流行りのオンラインゲームで盛り上がり、いい時間になったからとゲームをやめてそのままベッドにダイブし爆睡を決めこんだ。
はずだったのだが…
次の日、小鳥のさえずりに起こされたかと思うとそこはもうなんだかわからない空間。知らない天井、知らない匂い、知らない男性、知らないだらけのオンパレードだ。
ただ感覚的な話だが何故だか知らない男性とは言っても不審者ってイメージは全くわかなかった。どちらかと言うと『身内、家族』そんな感じのイメージが強いと言った方がいいだろうか。
「ふふっ!そんなに近づいたら『イヴ』が驚いちゃうでしょ?」
「あぁっっ!!、、、そうかそうか!見てくれたようでつい嬉しくてな」
大柄な男性は私のすぐ横に目をやり会話をしている。隣から聞こえてくる声はとても優しく、母親にも似たような感覚を覚える。
だが会話の意味が全然わからない。それになぜか体が動かしにくい。
さらには。
…声が出ない
いくら声を出そうとしても出てくる声は、「あい」や「ちゃ〜」ばかり。頭では「ここはどこ?あなたはだれ?」と言いたいのだが口が回らない。
そんなこんなで頭の中で今の状況の整理をしていると、大柄な男性は私の何を察したのか私の体に手を伸ばしてきた。
「そうだイヴ。高い高いしてやろう!きっと楽しいぞ〜」
…高い高い?、、、え、どういうこと?
高い高いなんて今までの人生でやられたことは…もしかしたらあったのかもしれないが、記憶には全然残ってなんていない。それもそのはず私はこれでも高校一年生だ。10年以上も前の子どもの事、記憶に残ってる方がすごいだろう。
だがなんというか、高校生にもなる私が高い高いをされる。これだけはすごく恥ずかしく感じる。私は男性の高い高いを阻止するため、懸命に動かしにくい体を動かしながら声を上げて抵抗を試みてみる。
だが。
「なんだ?そんなに嬉しいのか?それじゃあサービスでたくさん高い高いしてやろう!」
…そうじゃないのに!!
抵抗むなしく、さらにはサービスまでついてしまう始末だ。男性はそのまま抵抗を試みている私の体をお姫様抱っこをするように軽々と持ち上げる。
…あれ?
私は抱かれた時にふと思った。私ってそんなに手で収まるような小柄な体だっただろうか?さすがに私も学生だ。バカでも自分の大きさくらいは把握できる。けれども支えられてるのは男性の腕というよりかは手で支えられてる感覚が強い。
…やっぱり何かおかしい
そう思った時だった。ふと立てかけてあった大きな鏡が目に映った。
…え?
鏡に映ったまさかの自身の姿に驚愕を覚えた。なんと男性に支えられていた私の体は小さな小さな赤ん坊の姿へと変貌していたのだ。さすがにこれはないだろう。学生の私が朝起きたら赤ちゃんになってるなんてこと考えられるはずもない。それに抱き抱えられて見えた世界は全く見たこともないような世界観が窺える。
…こんなのまるで『異世界転移』じゃない!
…は!
自分で思っていて、はっ!としてしまう。今までよく書店や携帯でよく見てきたラノベ。今目の前にはそんな世界が広がっている。
…これがまさかの異世界転移だっていうの?私はまさかの異世界に来ちゃったっていうの!?
あるはずもないような出来事に頭の中がパニックになってしまう。もちろんここにいる理由なんてわかるはずもない。だが今あるこの現実は『夢』というにはあまりにも生々しすぎる感覚がある。だとしてもやはり異世界というのが信じられない自分がいるのは間違いない。
…少しばかり状況を探るしかないかもしれない。
というより…それしか今とれる手段がないというのが正しいか。運が良くか悪くか、小さい姿でも記憶はあるし、考えることもできる。生きてれば何かしらわかることもあるだろう。
私は嫌々ながらも男に高い高いをされつつ、その後のことを考えることにした。
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