第13話 行商人を救う 2024/1010 後の展開のための匂わせ描写を加筆修正


 転売業から足を洗った俺は冒険者行に勤しんでいた。

 ――と言ってもまだ低ランクだが。


「……依頼完了しました」


「お、もうできたんですか!? 相変わらず仕事が早いですねナオスさん助かります」


「いえ、それでは失礼します」


「はい、またお願いします」


 冒険者ギルドの受付の人とやり取りをして報酬を受け取る。

 冒険者ギルドに登録して初めて知ったが、補修の仕事は結構多く冒険者ギルドへの貢献することが出来たのでもうすぐ昇格出来るだろう。


「北の森に出現するオークの耳を納品していただければ、一つ等級が上がりますよ」


「本当ですか? じゃあ今から行って見ます」


 俺は相棒のメタルなスライムのスラちゃんと一緒に、オークを探しに来たの森に向かった。







 道中は平和そのものだった。

 小鳥の声に耳を傾けながら舗装された道を歩いていく。


「暇だ……」


 今世初めての旅の景色を楽しんでいたが、ずっと続く街道に癖癖してきた。

 

「【魔力探知】」


 魔力探知に反応があった。

 森の中を奔る古い街道があったと記憶している。

 

「人と魔物?」


 誰かが魔物に襲われているようだ。

 魔力が成長しすぎた今の俺には、ゴブリンとオークの魔力の違いが判らない。

 蝋燭とマッチの火の大きさを比べるようなものだからだ。


 体外へ放出される魔力を抑え誤魔化して反応のあった方へ近づいていく。

 荷馬車がオークに襲われていた。

 ボウガンで応戦しているのは商人だろう。

 しかし見るからに商人は劣勢だ。


 護衛代金をケチったツケが回って来たのか、はたまた護衛に逃げられたのかは判らないがどちらにしても運のない行商だ。

 

「うーん。助けるか?」


 今の俺には助ける力はあっても助ける道理はない。

 商人が死ぬのを待ってからオークを倒せば、今ここにあるものは総取り出来る。が流石に良心が咎めた。


「まずは助けてそれから考えよう」


 身体能力を魔術で強化し剣を蜻蛉トンボに構えながら走り寄る。

 善意で助けようとしているのに誤射されてはたまらないので声をだして存在を、行商にアピールする。


「――助太刀する! スラちゃん。ストライク!」


「ピー」


 メタルなスライムのスラちゃんに直接攻撃するように命令し、その隙をついて魔力を刀身に流し切れ味を強化する。


「スラちゃん商人を守れ!」


「ピー」


 突撃を終えたスラちゃんに商人を守るように命令してからオークに攻撃を開始する。

 オークに袈裟斬りを放った。


「はあああっ!!」


「ブモォォオオオ」


 しかし、加減しすぎたのか胸と腹を切り裂くにとどまっている。

 返す刀で今度は首を狙って逆袈裟に斬りつける。

 喉笛を掻き斬りオーク膝から崩れ落ちた。







 商人は焦っていた。

 この商品が捌けなければ破産してしまう。

 だかしかし護衛の冒険を雇う金も惜しく、商品だと言い訳し購入した。粗悪品のクロスボウがあるから大丈夫だと自分に言い聞かせ、ベネチアンの街に向かっていた。


 行商人と言えば聞こえがいいがその実態は、実家を継げなかった商人の次男坊以下か流民が行うような極めて賭けの要素が強い生業で、現代で言えば貯金せず転売に勤しむフリーターが近いだろう。


 そして運が悪いことに空腹で好戦的なオークが突如襲ってきた。


「なんだ! あのブタ面の巨体! オークか!! クソ普段はこんな場所に居ないだろ!!」


 ここまでなら良くある不幸ですんだ。

 事実、自然の脅威を舐め大損をする商人は少なくない。


 不幸が連続したことによる事故だった。

 一つは護衛をつけなかったこと。

 二つ目はオークの足が遅く最悪逃げるとタカを括っていたこと。

 三つ目は武器をもっていて撃退出来ると考えてしまったことだ。


「オークの一体くらいなら、なんとかできる俺にはコイツがあるからな」


 そう言って荷馬車に積んでいたボウガンに手に取った。

 しかし、矢はハズレ。駆鳥の操舵を誤った事でオークとの距離が近づいていく……


 オークは体力の消耗を待っている。

 駆鳥は完全に怯えてしまい走るのやめてしまい役に立たない。


「動け! 動けってんだよ! このポンコツが!」


 怒号罵声を浴びせるが駆鳥は動くことはない。

 恐怖のあまり手がブレてしまいオークに矢が刺さることはない。


「ひっひぃ~」


「グモっグモっ」


 なんだか興奮した様子で鼻を鳴らし近づいて来るオークの表情は、笑っているように見える。


 まずい。


 獲物が逃げられないことをいいことに、こいつは一気に襲い掛かってこない。

 相手が弱るのを、じっくり待っている。

 いやもしかしたら恐怖していると言うことを楽しんでいるのかもしれない。


 頭の片隅で日死ぬのでは、という恐怖がよぎりと身体ががたがたと震え喉が渇き、クロスボウを持つ手がぐっしょりと濡れる。


「グモっグモっ」


 オークは興奮した様子で鼻を鳴らす。

 

 まずい、どうすれば。


 もはやこれまでか、と思ったその時オークの顔に何かが飛んできた。


「え?」


 何が起きた?


 予想外の出来事に唖然としてしまう。


「スラちゃん商人を守れ!」


「ピー」


 子供? 冒険者か!


 スライムを従え現れたのは少年だった。

 服装は軽装。武器は刀だけなんとも頼りない。


 大丈夫なのか?


 正直、自分より弱く見える。

 ゴブリン一体だって倒せるかどうか。

 少年の小さな体躯は思わず心配になる程だ。

 だが少年は魔物に襲われる俺を見捨てず勇気を振り絞って、助けに来てくれたのだ。


 例えどんな弱そうな冒険者でも、力を合わせるしかない。

 震える身体でクロスボウを押さえつけ、矢を装填しようと試みる。


「ブモモモォォオオっ!!」


「はあああっ!!」


 少年は剣を振り降ろすと即座に斬り返しオークは膝から崩れ落ちる。


「えっ?」


 俺は信じられないモノを目にした。

 オークを斬り殺した少年はロクな魔術を使っているようすはなく、少年の素の実力が高いことを示していた。


「前に雇った冒険者なんか目じゃねぇ」


 少年は返り血の一滴も浴びず一切攻撃を受けてもいない。

 一撃必殺。

 否、二撃必殺。

 とんでもない凄腕だ。


 行商人をしていると不思議なモノを目にするとは、聞いていたが男は初めて見た。

 そして人を見かけで判断してはいけないとの師の教えを身を持って実感した。


「大丈夫ですか?」


「助かったよ。普段はオークがこんな場所に居るはずないのに……」


 そう、助かったのだ。

 極度の緊張から開放され、へなへなと商人は座り込んだ。




============

『あとがき』


 読んでいただきありがとうございます。

 現在皆様にご提示している更新予定分までしか、ストックがありません。

 現在執筆完了分はラストバトル序章と言ったところです。

 不甲斐ない話ですが、約一年間作品で結果が出せずスランプ状態であまり小説がかけない状態です。


✨【残り58話】✨


 なので読者の皆様に、大切なお願いがあります。

 少しでも


「面白そう!」

「続きがきになる!」

「主人公・作者がんばってるな」


 そう思っていただけましたら、作品の【フォロー】と「★★★」にして、評価を入れていただけると嬉しいです。

 つまらなけば星一つ★、面白ければ星三つ★★★

読者の皆様が正直に、思った評価で結構です!


 多くの方に注目していただくためにも、読者の皆様に応援していただけると嬉しいです!

 作者の自尊心を満たして頂けると執筆が早くなります。

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