チーターアイランドサバイバル ~異世界チーター共に復讐してやります~

タチハヤ

第1話 配信

 いつまでこの鬼ごっこを続けなければならないのかと舌打ちする。


 両手に抱えたガトリングが絶えず火花を散らしながら敵機体が足と背のブースターを噴射して距離を詰めてくる。


 対してこちらは防戦一方。進路を斜めに取って嵐のような銃弾を避けつつ、距離を保つことしかできない。一度銃弾を喰らえば数秒と持たず、画面端のバーは削り切られてしまうだろう。


 配信用のディスプレイにはコメントが滝のように流れる。中には同じ思考に至っている者も多い。


『何秒打ちっぱなしだよww』

『弾数無限やろうな』

『運営さんチーターがここにいますよw』


「好きなだけ使えよ。ダメージは通るみたいだし、その程度の小細工で勝てると思うなよ」


 あえて袋小路に機体を滑らせ、敵を誘う。ノコノコやってきたところでブースターを全開にして壁に向かってジャンプ。機体を反転させて壁蹴り。敵の背後を取る。

 

 振り向くと同時にレーザーソードを引き抜き、ガトリングを抱えていた両腕を切り落とした。


「チート使っても勝てないなんて、ねえ、今どんな気持ち!?」


『やっっっばww』

『タカナにしかできないだろ。こんな芸当』

『やっぱ存在がチートやわww』


 戦闘が終了し、マッチング画面へ戻る。画面端にトロフィーを取得した通知が出る。


「これでトロコントロフィーコンプリートしたし、次やるとしたら何かな」


 コメント欄には有名タイトルが並ぶがどれもそそられない。そこに聞きなじみのないタイトルがやってきた。


『チーターアイランドは?』


「チーターアイランド?」


 すぐに検索エンジンにかけるとまとめ記事が出てきた。


「新たなチーター対策にチーター同士をマッチングさせる、通称『チーターアイランド』があるとの噂。しかし、チーター条件に合致した通常プレイヤーも巻き込まれるなど技術的な課題もあるとのこと」


 ネタコメのたぐいだったがニヤリと笑えた。


「行けるものなら行きたいね。全員頭ブチ抜いてやるよ」


『流石っス』

『○ザップはよ』


「あ、エナドリ切れてたわ。ちょっと取って来る」


 ゲーミングチェアから立ち上がるとグラリと眩暈がする。毎日の長時間配信に加えて運動不足。食事もコンビニ飯や菓子ばかり。流石に今までの不摂生が祟ったか。


 机に寄りかかろうと手を付くも、滑り落ちてエナドリの空き缶が床に散乱した。


『は?』

『www』

『何やってんの?』


「ア、アア」


 声が出ない。床に伏したまま意識が遠のいていく。


『マジ?』

『やばくない?』

『異世界転生するヤツじゃん』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る