もう海には行けない

土埃の舞う道も

数時間に一本しかないバスも

あなたと二人でなら

楽しかったよ

小さな駄菓子屋さんの

前にあるベンチで

並んで座って飲むラムネは

夏の味がした


波の音も

海辺で拾った桜貝も

今は遙か遠く、遠く


帰り道にいつも寄っていた

民芸館が閉館してしまったと

地方ニュースの片隅で知ったよ


もう海へは行けない


あなたはいないし

わたしはもうあんなには歩けない


海へは行けない


何より行き道を忘れてしまった

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