夏の匂い

そういえば

夏の匂いを忘れてから

ずいぶんになる気がする


毎年、変わらずに夏はやってきて

何なら早すぎるくらいに

居座り続けてやっと過ぎるけど

あれはわたしの知る夏じゃない


凶暴なばかりで容赦なく

ただただ尖ってイライラしていて

懐かしい土の匂いも、もうしない


そんなものだと他人ひとはいう

あの夏なんてのは思い出補正

時の流れはそういうものだと


そうかもしれない


あの夏も

あの夏の匂いも

幻想にすぎないのかもしれない


それでも

わたしは今も

無意識に

わたしの夏の匂いを

探している


耳鳴りが

蝉の鳴き声のように聴こえる


夏の気配のする


こんな日には

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