第2話 異世界について学ぶ異世界人

 潮の香りと小波の音が俺を起こさせた。


 「なんだ、ここは?」


 周囲見渡す限りに陸はなく、ただ水平線が広がっている。海中を見ようとするが、海の底が見えない。ただ暗く濃い闇が広がっているだけだった。

 そんな空間に1人いる俺に対して誰かが話しかけてきた。


 『なんじよ、我の下にくるがいい。』


 「誰なんだ、あんた一体?」


 『覚えておくがいい、海は…』


 ドンドンと視界が歪み始める、それと同時に、目の前に黒い靄がかかった何かがこちらを見つめる。

 

 「待って!待ってくれ!」


 俺は必死に呼びかけるが、それも虚しく再び俺の意識は薄れて、消えていった。

 

 体を揺さぶられたのか俺は目が覚める、寝起きでぼんやりしているのか、目を擦り揺さぶられた方を見ると、俺の目の前にいたのはマナさんだった。


 「ソウタさーん、起きてますかー⁈」


 「うわっ???」


 夢か?だが、鮮明に覚えているが、最後の部分が思い出せない。あれは一体?


 「大丈夫ですか?魘されてましたよ。」


 「あぁ、大丈夫です。」


 青いパーカーの様な上着に、灰色の短パンを着た、天使がいた、非常にかわいい。


 「似合ってますね、その服。」


 「あっ、ありがとうございます。」


 「今日は、集落を案内してくれるんでしたっけ?」


 「そうです!いっぱい良いところあるので楽しみにしててください。」


 そうして俺は宿屋を出て、マナさんに集落を案内してもらった。

 集落には、宿屋と酒場兼ギルドがあり、どこも賑わっていて活気が溢れていた。

 マナさんによるとこの世界の海流の終着地点がこの人魚島で、海流の流れによって年間10人ほど流れ着き、そのおかげか今この人魚島は一種の観光地になっていて、最近になってギルドも設立され、それらのお金を使って街や集落を一新したそうだ。

 

 「集落って感じなのに、すごい賑わいだな。」


 「そうでしょう。そういえば、ソウタさんはギルドには入ってるんですか?」


 「えーっと…」


 『テレポート!』


 突然ゲームで聞き慣れた魔法の名前が聞こえた。聞こえた方向に振り返ってみるとを冒険者らしき人が光に包まれてどこかに飛んでいっていった。


 「マナさん、この世界、魔法ってありますか?」


 「見るの初めてですか魔法。」


 「は、はい。もし良かったら教えてくれたりとかはできますか?」


 「私からは教えるのは得意じゃないので、私の師匠のところならいいかもしれません、ちょっと着いてきてください。」


 言われるが着いていくがままに道を歩いていくと、丘の上に一つの小さな家が建っていた。


 「オルキスさーん、いますかー?」


 とマナがドアを叩くと、一人の少女が出てきた。


 「どうしたん?って、マナちゃん男なんか連れて来ちゃって、私ゃ恋愛相談とかしてないよ。」


 「ち、違います!彼に魔術を教えてもらいたく、来ました。」


 「よろしくお願いします!」


 何だこの女の子、というか口調からして多分俺よりもずっと歳上だよな。ロリババアか?


 「まあ、いっか。マナのツレってこともあるが、お前さんの目にはそこまで悪いものは感じなかったし、まずはお前さんの属性を調べなくちゃね。」


 そう言ってオルキスは何やら一枚の紙を持ってきた。

 「これは?」


 「この上にお前さんの身体の一部何でもいいから乗せな。」


 と言ってきたので、髪の毛を一本髪の上に乗せると、髪の毛は紙の中に入っていき、紙に文字が現れた。


 対象:海風槍太うみかぜそうた

 適性属性 基本属性 水、風 

 根底属性 光


 「お前さん異世界人なのに珍しいね、二重属性保持者デュアルエレメンターだなんて。」


 「ソウタさん異世界人だったんですか!?」


 「えっ、うんそうだけど。」


 「全然気づきませんでした。」


 「マナは異世界人を見るのが初めてじゃったな。」

 

 「あのー、異世界人ってそんな珍しいんですか?」


 「まあ珍しいわな。どこぞの神の悪戯か、慈悲かでこの世界に来るやつはおるが、滅多に少ないぞ。」


 「えーっと、デュアルなんとかってなんですか?」


 「人の適性基本属性は一つが多いだけど、それが二つもあるから、二重属性保持者デュアルエレメンターって呼ばれておる。」


 「あの、さっきから言っている、基本属性って何ですか?それと根底属性って…」


 「お前さん本当に無知なんだね、まあ異世界人なら仕方ないか。わかった、一から説明するよ!耳の穴かっぽじって良く聞きな!」


 と言って色々と説明してくれた。

 魔法は火、水、木、風、土、雷の基本属性と光、闇、無の根底属性と回復や毒、時空などに分かれており、基本属性は自然現象を魔力によって再現、自在に操るものである。


 再現された現象は高威力になるが、魔力消費が激しく、状況によれば不確定要素も大きくなる。


 自在に操るのであれば、それだけの集中力と想像力が必要となり、魔力を操るセンスなども必要になる。


 属性によって主に役割が決まっていて、火力を出すなら火、土、雷属性。守るなら木、土属性。

 サポートをするなら水、風属性と分かれている。

 そしてそれらの魔法を使用法を記し、簡略化してある本が魔導書であり、言わば魔法の教科書である。そして、オルキスさんは、火属性専門の魔導書の作成した凄い方みたいだ。

 

 根底属性は自身の在り方により変化する。善として生きるのであれば光属性に傾き、悪として生きるのであれば闇に傾き、中立の立場にいるのなら、無属性になる。この根底属性は後転的に変化する場合があり、精神の乱れなどでも変化し威力が増減したりする。


 光属性の魔法は主に祝福とされる言わばバフや対死霊アンデット系。

 闇属性は呪いなどのデバフ対生物系。


 無属性は武器の一時的な巨大化や銃弾の生成などの物質の補填や具現化に近いものらしい。


 そしてこれらの属性は掛け合わせたり、武器などに纏わせたりすることができるが、それを簡単に行うことはできないということがわかった。あと自分の適性属性の魔法は詠唱が短縮されるらしい。


 「マナさんは、何の属性が適性何ですか?」


 「私は、木、水属性だよ。」


 「マナさんも二重属性保持者デュアルエレメンターだったんですね!」


 「まあ、私一応人魚ですから、人間と違って2個ぐらいが普通です。でも人間で、二重属性保持者デュアルエレメンターは本当に少ないから、とっても凄いと思います。」


 あれ、もしかしてこれ異世界無双が始まる流れでは!?というか最初から疑問に思ってたんだが、この世界って魔王はいるのか?

 

 「そういえば聞いておきたかったんですけど、その世界の人間って魔王と敵対とかしたんですか?」


 「しておったよ。まあ、それもちょうど1010年前に人魔共存宣言をする前になるがな。」


 「何で人魔共存宣言したんですか?よっぽどの利害関係がないと成立しなさそうですけど。」

 

 「鋭いところを突いてくるねソウタ君。あったんだよ、人間と魔人が手を取るほどの利害関係の一致となった、よっぽどのことがね。」

 

 「それはどんな?」


 「簡単に言えば、厄災討伐じゃよ。」


 「厄災討伐……だから人魔共存をしたのか。」


 「そう、だからこの世界じゃもう魔王討伐なんかは起きないし、こうしてマナたち人魚などの魔人たちも人間界で暮らしておる。まあ知能の無い魔物は相変わらず敵対しておるが。そういうのを退治するのも冒険者の勤めじゃ。そういえば、お前さんどのジョブに着きたいんだい?」


 「ジョブとかあるんですか!希望は無い、こともないんですが。元々はモリ突き漁師だったので、槍使いとかがいいかなと思います!」


 「じゃあ、ちょっと着いてきな。」


 オルキスに連れられて丘を降り、集落のギルドまでやってきた。


 「ポラリスはいるかーい⁈」


 とオルキスはカウンターで大きく声を上げる。


 「はいはーい、ただいま。」


 と2階から声が聞こえた。

 素朴さと階段を駆け下がってきた男は、吟遊詩人のような風貌をしたこの集落のギルドマスターのポラリスである。


 「今日はどういったご用件で?オルキスさん。」


 「駆け出しの二重属性保持者デュアルエレメンターを見つけてね、彼が槍使いになりたいというもんだから、連れてきたのさね。」


 「いいですよ、というか面白いじゃないですか、人の二重属性保持者デュアルエレメンターなんて滅多にいませんからね。貴方は槍使いになりたいのですね、だったら奥の部屋に来てください。そこで、槍使いへの就職クラスアップを行いますので。」


 「あ、はい。」


 何か勝手に話進んでる!?まあ、なりたかった。職につけるれるみたいだし。まぁ結果オーライって感じでいいかな?

 そして、就職の手続きが終り、ポラリスさんにギルドカードを発行してもらい、俺はフリーの槍使いになった。

 ギルドカードには様々な機能が付いていた。

 チャット機能、ステータス確認、クエストカウンターに電子決済ならぬ魔法決済までも付いていて、もはやスマホであった。

 その場で、ポラリス、オルキス、マナさんと連絡先を交換し、宿に戻った。

 そして、さっそく自分のステータスを確認してみた。

   ステータス

 名前:海風槍太うみかぜそうた

 種族:人間(人型)

 職業:槍使い

 称号:二重属性保持者デュアルエレメンター

 保有技能:水移動、魚類特効

 保有能力:モリ突き

 能力値

 LV:1 HP:15 MP:8

 筋力:10 防御:4 魔力:5

 賢さ:2 魔防:2 俊敏:6

 適性属性:水、風 弱点属性:無し 根底属性:光

 次のLVまで後150EXP

 装備

 右手:モリ(攻撃力:20)

 左手:無し

 頭:バンダナ

 胴:水陸両用シャツ、アロハシャツ

 腰:水陸両用ハーレムパンツ

 足:水陸両用スニーカー

 アクセサリー:無し


 なんとなく、RPGのステータス画面に似ている。そして1番気になるのは保有技能の欄にある、水中移動、モリ突き、魚類特効の3種類である。

 あくまで妄想だが、元いた世界での習得したものが昇華されたのではないのかと思う。


 「水移動」 

 水中、水面にいる時、水による抵抗を無視して活動可能、筋力、俊敏が20%上昇。


 「魚類特効」 

 魚類に対するダメージの増加。 


 「モリ突き」 

 一度でも戦闘を行った相手の弱点と状態の把握、弱点への攻撃時、攻撃力を5倍。

 

 この中で1番ヤバそうなのがモリ突きである。

 攻撃力5倍なんて常識的に考えてやばい、さらに一度戦うだけで、弱点とかわかるとか強くないか?

 それに水移動は水で体を覆うだけでも発動することになるし、案外チート染みてるのかも。

 でもまだレベル1だし、攻撃力が5倍といっても現場の最高打点は160ダメージだし少しの格上レベル5ぐらいの敵なら結構ダメージが入るけど、これは防御無視じゃないし、入っても140ダメージしか入らないと思う。

 なんならダメージの計算方法が、武器攻撃力+筋力ー(相手防御)=ダメージかどうかも怪しい。


 部屋でそんな事考えてると、クエストカウンターから通知が届いた。


『クエストE+ ゴブリン退治 成功報酬500G+魔法武器マジックウェポン


『クエストF 薬草採取 成功報酬 700G』


 ゴブリン退治か、力試しもしてみたいし、薬草採取とかダルそうだし、受けてみるか。


 『クエストE+ ゴブリン退治を受けまか?

  YES/NO』

 もちろんYESだ、期限は明後日までだから、今日は飯食って、寝て明日午前中に準備してから行こう。

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