『カムタマ文明』~第二章 ネム~現代語訳版

満梛 平太郎

翻訳者前書き / @macamong710

 カムタマ文明は未だ謎多き文明である。彼らは忽然とこの世界から消えたように思える。彼らがこの世界で生活していたのは凡そ六万年以上前、今から真実を知る事など、どう足掻いても出来ないにも関わらず、彼らに魅了される人々はやまない。掴めそうで掴めない彼らの足取りを追うこと、それは恋の陶酔境に浸り続けるようなものである。

 かく言う私自身もその中の一人で、確か五歳頃と記憶しているが、母方の祖父が亡くなって母の実家に伺った事があった、その時偶々近くの郷土資料館でカムタマ土器展を催していて、それを見に行った事がきっかけで、立派なカムタマ族(カムタマ文明愛好家の俗称)になったわけである。      

 今思えばあの時の母は父親が亡くなって悲しかったんだと思う、それを紛らわすため私を口実にしてカムタマ土器展に行ったのだろう。しかしながらお陰様で今ではこうしてあのエマーソン・マリブークの本を翻訳出来るのだから、誠にカムタマ文明さまさまである。

 さて、このエマーソン・マリブークが記した『カムタマ文明』とは今更言うまでもなくカムタマ文明の存在を世に知らしめたまさに大傑作である。歴史書に対して大傑作と言うと品がないかもしれないが、現在に於いてもカムタマ文明についてこれ以上の内容を集積したものは無い。何故なら歴代の覇権国家は触れてはならぬものを遠ざけるように、揃いも揃ってカムタマ文明に関する貴重な書物を次々と焚書してしまった。この為、現存する書物は数える程で、過去であるエマーソンの時代の方が資料が豊富であることが実に悲しいことである。

 しかし、幸いにも奇跡は起こっていたようで、太陽神ナジャイヴはエマーソンをカムタマ文明に寛容なラマゴス王国に産み落とされた。もしエマーソンがラマゴス王国に生まれなければ、私達の手元にあるこの著書は存在しなかったでしょう。

 この奇跡の本を、こうして皆さまに伝える一如になれる機会を与えて下さった、ウトキ卿にこの場をかりてあらたまり御礼をさせて頂きたい。

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