第13話 反省
アリエスは,正座をしていた.そのアリエスの目の前には,エリが仁王立ちしていた.
「アリエス,言いたいことは,いろいろあるけど.何をしてるの?魔法使いを連れて来てって言ったでしょ.」
エリは,そう言うとわざとらしく地団駄を踏んだ.
「怒らないでくださいよ.約束は守りましたよ.連れて来ましたよ.」
「私は魔法使いをって言ったんですけど.何で踊り子を連れてきてるの?そもそも何処から.踊り子を?それに,何か話を聞けそうじゃないし.」
エリはそう言って,アリエスが連れてきた人物を指さした.
そこには,目が死んでいるアリエスに魅了の魔法をかけようとしていた宮廷魔法使いが体育座りで座っていた.そこで彼女は
「私が……確かに平民で扱いは……でも,それに我慢して,立派な……私は………それにあの子は……」
そう,虚ろな目で呟いていた.
「宮廷魔法使いですよこの人」
「いや,どっからどう見ても,何かに怯えてる踊り子か,心が折れてる踊り子よ.アリエスが,この手の人物を見過ごせないことは,置いて置いてよ.せめて話が聞ける人も連れてきなさいよ.」
「それは確かに,でも,追いかけるのが遅くなって」
「……1回,全員,逃がしたの?」
「……ノーコメントで」
「それで,どうしたのこの人,どうしてこんな事に.アリエス.」
エリは,そう言いながら,魔法を使ってローブのようなものをその虚ろな宮廷魔法使いにかけた.
「私は,何で見捨てられた.……あの子は,私のことを……どうして」
虚ろな宮廷魔法使いは,ぼそぼそと呟いていた.
「それは,多分魔物に襲われたらから?」
「宮廷魔法使いでしょ.戦えるわよね.だったらここまでにならないわよ.」
「いや,なんかうん,魔法で縛られてて動けない状況だったので,いろいろあるんだと思います.僕が行くのが遅かったから.」
アリエスは下を向いてそう,自分を嘲るように小さく笑った.
「……何かあったのね.まあ,この子が暴れたり自暴自棄にならないようにいろいろ私はしてくるわ.ああ,誰かの親切が伝染したじゃない.」
「やっぱり,エリって意外と優しかったんですね.勇者パーティー時代の僕に対する発言も優しさだったんですね.」
「……それは,半々よ.それに…アリエスに……ああ,もう,私は行ってくるわ.」
エリは,少し遠くを見てツインテールを触りながらそう言うと座り込む宮廷魔法使いを宙に浮かして部屋を出た.
部屋に残った,アリエスは正座をやめて立ち上がるとノビをした.
「まあ,とりあえず,何も喋らない人が2人増えただけか.君が何かを話せば減るんですけどね.名前も知らないですし.」
「それは違う勇者.私は話す.後,何で勇者はびしょ濡れ?」
ガーネットは,そう言ってあまり表情を崩さずに首を傾げた.
「えっ,」
「何でびしょ濡れ?」
ガーネットは首を傾げつつ,手を前にかざすと魔法を使い温風を起こした.
「あっ,ありがとうございます.毒を洗い流すときに水を被ったんですよ.」
「……」
(どういう状況だ?意味が分からないのはいつもか.)
ガーネットは理解することも聞くことも無駄だと考えて追及を辞めた.
「それで,名前を教えてくれるんですか?」
「私の名前はガーネット.魔王の3女.」
「ああ,やっぱり,魔王の娘.魔力が似てます……大丈夫ですか?」
アリエスは,途中で言葉を詰まらせた.
「大丈夫.私は勇者を警戒はしてた.でも,父を殺したことは恨んでない.」
「……そうですか.」
「そう.では,私の話を聞いてもらいます.戻ってくるのが遅いので,エリさんには言いました.」
「……良いですけど.話しても大丈夫なんですか?」
「大丈夫.勇者の事は理解した.話は聞いた.少し脚色があるかもだけど,理解した.だから勇者を恨む気持ちは全くない.」
「……」
アリエスは,数秒黙った.多くの魔族を殺した.魔族は悪だと教えられていた.でも,戦う中で違うのではと何処かで感じていた.それでも,始めた行動を止める勇気がアリエスには無かった.だから全ての人間を救う勇者であろうとしていた.
それが悪であることに気が付いた.アリエスは,何も理解せず知らずに魔王を殺した事に罪悪感を感じていた.
「それに,私も,同じ人間は悪だと教えられてたから.同じ.それに勇者なら私も助けて.」
「……話してください.教えてください.」
「話す,とりあえず,ご飯でも食べて.冷える」
ガーネットはそう言うと残しておいたご飯の方向を指さした.アリエスは,ゆっくりとそこに向かう途中で立ち止まり,ガーネットを見た.
「そう言えば,魔王の娘なのにご飯作れるの?」
「最低限度,何も出来ない二人がおかしい.出来なさすぎ」
「……」
アリエスは静かに席に座り,食事を始めた.それを見てガーネットは自分の話を始めた.
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あとがき
文章の長さが安定しないです.文章は長いほうが良いのか,短いほうが良いのか.
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