第6話~アンジェの力~
「あのぉ、どこに行くんですか?」
蝸牛を肩に乗せたアンジェは、命じられるまま教会を出た。村にはまだ明かりが灯っている。宴はまだ続いていた。
「あそこの高台なら村を見下ろせそうだ」
外は暖かいとはいえ、風が吹くと素肌に法衣を着ているだけのアンジェは心もとない感じがした。
「やっぱり、下着履いてくればよかったかな」
下着を着けようとしたアンジェを制して、魔王は共に外に出る事を命じた。魔王の事を神の使いだと信じたアンジェは、素直に従った。
とりあえずの魔王の課題は、人間の肉体に転生することだ。しかし、それには段階を追わなければならない。《魂の転生(リインカネーション)》は禁呪の類だが万能ではない。消費する魔力の総量で転生できる対象が決まる。いくらカリアが意識を失っているとはいえ、現在の器が蝸牛では、人には転生できない。時間はかかるが少しずつ器を大きくしていくしかなかった。
アンジェは《光球(ライト)》の呪文を唱えると、その明かりを頼りに、教会から少し離れた山道を進んだ。しばらく歩くと木々が開け、村一面を見下ろせる高台に着いた。月明りが落ち魔法を使わなくても周囲が見える。そこには櫓が建てられていた。北の大地から魔族が来た場合、いち早く見つけられるように建てられた見張り台だった。魔王が倒れた今となっては見張りもおらず、辺りは鎮まり返っていた。
緩やかな風が吹き草木が揺れる。下からは村人達の嬌声が聞こえてくる。魔王は魔力を周囲に巡らし、生き物の気配を探った。
「とりあえず、もう少し動きやすい器を探すか」
魔王はいくつかの生き物に目途をつけた。後は転生の術を行う魔力を補給しなければならない。先ほどアンジェから吸収した力は、《眷属の萌芽》の生成でほとんど使い果たしていた。
「よいかアンジェ。先ほども言ったが神の復活の為には、魔力が必要だ。私は神の使徒として魔力を集めている。そこで、お前に協力して欲しい」
「は、はい。それで何をすれば?」
「お前は、神に選ばれた」
「私が?」
「先ほど神官との交わいにおいて、自分の身体に魔力が満ちるのを感じなかったか?」
「はい、私のものではない力が私の中に……」
アンジェは下腹部に手を添えた。そこには確かな力の潮流があった。
「それこそが神の御業だ。お前には男の精から魔力を得る力が備わっているのだ」
正確にいうと、魔力を奪う力だが、そこはごまかした。アンジェは納得したように頷いた。
「女にもそのような御業が備わるのですね。でも、これからどうしたら」
「その魔力を私が貰いうける」
「どうやってですか?」
「命じた通りにすればよい」
「はい」
「では、まずはその法衣をめくるのだ」
「えっ? ここで、ですか?」
アンジェはキョロキョロと周囲を見渡す。村を見下ろせる高台で時間は深夜。いくら人が来る可能性が低いとはいえ教会内とは違う。
「でも、もし誰か来たら」
「心配するな」
「……でも」
「神の復活の為だ!」
「は、はい!」
アンジェは言われた通りに、法衣を右手で捲り上げた。月明りで何も身に着けていない、白い下半身が浮かび上がる。ぬるい湿った風が、脚の間を吹き抜ける。その感触に、アンジェはぞくりとした。
「あ、あの……すごく恥ずかしいんですけど」
「もっと前に進め」
「えぇ! で、でも、あんまり行くと下から見えちゃいますよ」
いくら高台とは言え、下の村人達が見上げれば、姿を見ることはできる。目が良い者であればなおさらだ。
「いいから、進め」
「は、はい……」
一歩歩く事に、身体の奥から羞恥と共に、熱い感覚が沸きがってくる。
下腹部に熱い力がみなぎる。それは、粘着質のある汁となって、アンジェの秘部を潤わしていく。
「あぁ……私、こんなところで、恥ずかしいとこを晒して……」
アンジェの呼吸が荒くなる。
魔王の思った通り、アンジェは背徳感が快楽に変換されるタイプの女だ。魔力を凝縮され放出させる為には、より強い絶頂感が必要となる。魔王は羞恥によってアンジェの快楽を高めようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます