第5話 初クエスト


 洞窟に分け入ると、雑魚ゴブリンが次々と押し寄せてきたが、全て斬り伏せた。剣を振りやすい広めの洞窟だったことが幸いしたな。まぁ、そうでなくても素手でどうにかするが。


「大丈夫そうですね、ユークどの」


 シャルパンは呑気に声をかけてくる。ちなみに、シャルパンには一切手出し無用と命じてある。


「一応アルクスと呼んでくれ。国賊の名をみだりに呼ぶものではない」


「そんなぁ、なんでこの貧弱男の名を呼ばないといけないんですか! 私が忠誠を誓ったのは、四聖憲最強のユークどのだというのに!」


 シャルパンはそんな文句を言い始めたので、適当に無視することにした。【四聖憲最強】だの【ユーク】だのと、個人を特定できる単語が多すぎる。これに反応していては関係者だと思われてしまう。


 今のところ周りに冒険者はいないが、注意した方がいいだろう。


「……着いたぞ。こいつがボスのようだ」


 一際天井が高くなった空間に、巨大なゴブリンが立ちはだかっていた。


「ふん、私なら一撃で殺せます。アルクスどのはどうでしょうね?」


 無視していたことに機嫌を損ねたのか、シャルパンは嫌味っぽく訊いてきた。


「もちろん、余裕だ」


 俺はすかさず飛んできた棍棒を避ける。棍棒はめり込み抜けなくなる。所詮、ゴブリンの知性などこの程度か。


 俺は、棍棒を握る腕をすかさず斬り落とした。血しぶきとともに悲鳴が上がる。このくらいならアルクスの身体でも出きるか。問題は、既に筋肉痛が酷いことだ。骨まで軋むようなかんじがする。これ以上剣技で攻めるのは無理か。


 ならば、魔力の鍛練の成果を出すか。


「【血を流されよ。汝の子らは、育ての親を殺そうとする蛇となった】」


 詠唱とともに、聖気が満ちる。


「【セイクリッド・フレイム】」


 白炎が立ち上ぼり、ホブゴブリンを焼き尽くす。肉の焼ける匂いや、油っぽい煙も上がらない。後には、骨どころか灰すら残らなかった。


「終わりか。って、結構反動来るな」


「アルクスどのの身体では仕方ありませんね」


「そこにおわすのは、賢竜シャルパンどのではありませんか!」


 突如として、後ろから男の声が聞こえる。こんな洞窟の奥までついてきた奴がいたのか?


「な、なんのこと? 私は駆け出し冒険者のリナリアだけど?」


 シャルパンは咄嗟に嘘をつくが、慌てっぷりを隠せていない。これは、想定していたのとは別の意味でピンチだな。

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