第45話 彼らはどうなるのかしらね?
「何で私があんな目にあうのよ。とばっちりもいいもんだわ。みんな、あいつが悪いのよ。あ―、みんなの云う通り、あいつを許すんじゃなかった、あいつを戻してやるんじゃなかった!土下座してあやまっても、追い返せばよかったんだよー。」
猫耳の女獣人のソウ・セキは、テーブルの上に顔を押し付けるようにしていた。泣くか、罵るかどちらにせよというカンロ達の視線を受けながらも、顔をあげようとしなかった。
「助けてもらって、その言い分はないでしょう?それに、何の働きをしないで、結構な金、見舞金を貰っておいて・・・それはないでしょう?」
カンロは、彼女の正面に座って、ワインをグラスで飲みながら、少し馬鹿にするような目を向けていた。
セキが、カンロが属している地域の冒険者ギルドに、彼女達を頼るように、助けを求めるように、駈け込んできたのである。ただし、彼女は窮迫もしておらず、というよりは羨ましいほどに金を持っている、怪我もない、追っ手がいる状態でもなかった。
ただ、2週間ほど前までは、それとは正反対に近い状態ではあった。監禁状態だった。
「どうやって、そこから助け出されたんだ?噂では、ケンセキ達が1日で、あの犯罪都市を壊滅させたとしか分からないんでね。よければ、聞かせてくれないか?」
カンロの隣に座る、カンロとなら似合いの美男美女カップルになれる男が、やはりワインを傾けながら尋ねた。
「リーダーがそう言うなら…でも、あたいは監禁されていたから、本当のところは目撃してはいないけど…。」
ようやく顔を上げた彼女は話始めた。
彼女は、拉致され監禁されたのである。ケンセキ達を誘きだす人質として。
「私は関係ない、私は彼の愛人なんかじゃない、彼女達は親しい友人じゃないと言ったのよ。あいつとみんなの関係も説明して…無理矢理やらされてさ!弱点とか、彼女達を引き離すのには如何したらいいかとかさ、そんなことは分からないって、何度言っても分かってくれなくてさ、その挙げ句…。」
何故か、その日、計画通りケンセキ達が来るということになった時には、M字開脚された格好で縛り付けられていた、椅子の上で。カンロ達は、その姿を連想して思わず笑ってしまった、心の中で。
「男ってものはな、逃げた女に執着するものなのさ。奴は来るだろうさ、お前を助けに、お前を得るためにな。まあ、まともな野郎だったら、止めるだろうけどな、あいつは自分の力に酔って、過信している。だから来るのさ。取り巻きの女達は、嫌々でもついて来るだろうが、もう心が離れるだろうから、足を引っ張るし、絆も弱まる。」
と彼女を監視する虎族獣人のたくましい髭面の男は、彼女の体を吟味するように舐め回すように見ながら、言った。
「まあ、心配するなよ。あいつを殺したら、たっぷり女の悦びを感じさせて、可愛がってやるからよ、これだけの上玉の美人を粗末には扱えないからな。」
と続けた。すると、彼の、やはり逞しい手下達も好色そうな表情を浮べ、三人の魔導士の女達は不愉快そうな顔だったが。
「は?」
とカンロは、ここの中でぽかんと口を開けて呆れていた。"この女。なんて言ったのよ?"と思ったが、思い当たることもあった。彼女に振られてから、他の4人を自分の女にした、その後魔族女を加えたという彼らに関する噂というか、情報が流れていたからだ。さらに、彼が女達をあくまでも使っている、彼女達によって無双できている、ということに何故かこだわる内容になっているのもだ。"こいつが出所か?"
しばらくして、幹部の一人が入って来た。彼女のことを確認するように睨みつけた。正門から乗り込んできたが、それは陽動で裏門から忍んできた、予想通りだ。いざとなったら、彼女をさらしてケンセキを脅迫する、救出に忍んで来る奴もいるかもしれないから、用心していろと命じて去っていった。
「それから3時間くらいしてからかな・・・。みんなが目の前に現れたのは。」
その前に、大きな音と振動がした。どうなっているのかと不安だった、彼女は。ケンセキも、コウですらどうでもよかった、ただ自分がどうなるかだけが心配だった。
ケンセキ達六人は、入り口から堂々と入ってきた。あまり目立たない姿ではあったが、それほど誤魔化すような変装などもしなかった。 直ぐに、見張り役の兵士達に疑われ、取り囲まれた。それが開戦の狼煙だった。
そこの兵士達は、一瞬で掃討されたが、次々に新手が駆け付けてきた。それは、犠牲者を増やすだけのことでしかなかった。それに呼応して、裏門から忍び込むように侵入した一団がいた。勇者達とそのチームの面々だった。彼らこそが本命だと、市の幹部は即断して、主力を向けた。正門の方にも、かなり兵士達を送ったが。勇者達は、どちらかというと防御に専念した、自分達が陽動であるからだった。
結果、ケンセキ達は市の中心部にあっというまに侵攻してしまった。ここにいたって、裏門に向かった主力を回そうとしたが、今度は勇者達がそれを阻止まではしないが、後ろから攻撃を加えたりして、その歩みを極力遅くした。
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