第29話 歪な三角関係
トーカから情報を受け取り、図書室を出たオレは体育祭実行委員へと向かう。
てか、委員会始まるの遅くね?
放課後すぐ始まらないの帰宅部には辛いだろ。
まぁ、この学校、帰宅部ほとんどいないんだけどね。
日菜も詞も、村雨でさえも部活に入ってるからな。
オレもこの謎のミッションに巻き込まれてなかったら、今ごろ部活動に勤しんでたんだろうか?……ねーな。絶対速攻で家帰ってテレビ見ながら家事してるわ。
「ちょっと!制服のシャツが出てるわよ!仕舞いなさい!」
この声は!
聞き覚えのある声にオレはパッと振り向く。
おおー!やっぱり桔梗じゃん!
人間関係ごたついてるって聞いてたけど、変わってないみたいでよかった、よかった!
「よ!桔梗さん!」
「よ!じゃないわよ!制服、ちゃんと仕舞いなさい」
「へいへい」
「湾月くんって部活入ってなかったわよね?こんな時間まで何やってんの?もしかして勉強?」
「勉強と言えば勉強かな?赤点の補習だけど」
「あー。そうだったわね!先生に迷惑かけてないでしょうね?」
なにその質問?
母親か!
「オレが赤点取った時点で先生は迷惑だと思うぜ」
「それもそうね。ところで、補習はもう終わったのよね?これから帰るの?」
「いや。今から体育祭実行委員の手伝い」
「え!?体育祭実行委員の手伝いやってるの!?偉いじゃない!」
「そいつはどーも」
まぁ、やらかしたペナルティーによる強制参加なんだけどね。
傍から見たら率先して委員会の手伝いをしてる真面目な生徒に見えるわな。ラッキー!!
「ふーん、そっか。ねぇ、もしよかったらなんだけど、文化祭実行委員になってもらえない?」
「へ!?」
「私、文化祭実行委員に立候補する予定なのね!
ほら!やっぱり高校の文化祭って特別でしょ!?だから、みんなの思い出になるような文化祭にしたいなって思って!
文化祭は11月だからまだ先なんだけど、どう?」
えー。
ここで断ると、ペナルティーで手伝ってるって知らない桔梗からしたら「なんで体育祭は手伝うのに、文化祭は手伝ってくれないの!」ってなるよな。
真面目な生徒に見えるの、全然ラッキーじゃない。
「わ、わかった。ただし手伝いでいいならな」
「わかったわ!ありがと!」
まぁ、嬉しそうにしてくれてるしいっか!
好感度は積める時に積んどくべきだしな!
「じゃあ、オレ委員会行くから」
「うん。頑張ってね!また明日!」
『心配してたけど、大丈夫そうね!』
「そうだな」
オレが会議室に到着すると、すでにある程度の人数集まっていた。
その中には阿雲姉妹の姿もある。
「あっ、後輩くん!今日もサボらずちゃんと来たねー。偉いぞー!」
「どうも!」
「あの、鏡夜くん。昼間は逃げちゃってごめんね。」
鏡夜くん?なんだそれ?
「あれ?なんで風歌、後輩くんのこと名前呼びなの?」
「え?えっとー……」
突発的にそういうことするから上手く返せないんすよ!
風歌先輩って思ったよりも考えなしかもしれない。
「昨日、
「仲良く?」
「はい」
「そ、そうなの!」
「ふーん。仲良く、ね。じゃあ、私も鏡夜くんって呼んでもいい?」
「いいですよ」
雷歌先輩は完全に風歌先輩に対抗しにきてるな。
そして、風歌先輩が「食いついた!」って顔をしたのオレは見逃さなかったすよ。
こいつはほぼ間違いなくオレの読み通りだな。
風歌先輩はオレのことが好きだと雷歌先輩に勘違いさせたい。
雷歌先輩は風歌先輩が気に入った人物を自分のモノにしたい。
そして、オレは風歌先輩の作戦に乗っかりつつ、雷歌先輩を堕としたい。
三人とも各々の目的のために相手を出し抜きたい、地獄の三角関係ってところか。
この状況、オレとしては好都合だ。
互いに行為とは別の目的がある以上、ある程度の我がままであれば通りやすい。
ここは今後のためにも、釘を刺さしてもらおう。
「話し戻りますけど、風歌先輩。昼間みたいに陰でコソコソするのは、周りに変な目で見られるので勘弁してください。別に普通に話しかけてくれればいいですから」
「わかった。ごめんね」
「じゃあ、私も普通に話しかけていーい?」
「いいですよ」
二人とも露骨に距離が近いな。
美人姉妹と近距離で談笑してるこの状況、傍から見たら非常に羨ましいモノなんだろうな。
帰宅したオレはパパッと家事を終わらせると、阿雲雷歌攻略の参考になりそうなゲームを探すために自室のパソコンへとかじりつく。
『またゲームを参考にするの?』
「当然だろ?瀬流津はそれでうまくいったんだ」
『まぁ、そうだけど……』
しっかし見つからないな~。
そもそも他人のモノを奪いたがるヒロインなんて存在するんだろうか?
オレはありとあらゆる恋愛ゲームの説明文やレビューを、時間を忘れて読みまくる。
「いた!!」
『なにもう!いきなり大きい声ださないでよ!ビックリするでしょ!』
「すまん、すまん。阿雲雷歌っぽいヒロインを見つけてついな」
『へー、見つかったんだ!どれどれー?『白より黒く 黒より白い』 ──ってR18じゃない!?』
「R18とかはどうでもいいだろ?」
『ダメでしょ!鏡夜まだ18になってないんだから!』
「命が掛かってるんだからそんなこと言ってられねーだろ!」
ドンッ!!
「アニキ、うるさい!!何時だと思ってるの!?」
「すんません……」
怒られてしまった……。
ってもう0時回ってんじゃん!そりゃ、怒られるわ。
ただ、今回は攻略対象側からも動いてくる可能性が想定がされる以上、こっちものんびりしてられない。
さて、やるか!
『ちょっと今からプレイするの?』
「時間がないからな。
それにこのゲームブラウザ版しかないみたいで持ち運んだりできないみたいだ。
家にいるうちにクリアしないと」
オレは外が明るくなり、鳥の声が聞こえるようになる時間までプレイし続けた。
「ふー。とりあえず、基本ルート二種はクリアできたな」
なかなかに素晴らしいゲームだった……!
エッチなことに興味津々だが、自分を安い女と見られたくないから意地を張ってしまう王道ヒロイン「スフィア」と、他人の恋人を好きになってしまう性格で、奪うためには過激な色仕掛けも辞さない悪女系ヒロイン「フランダ」の二人しかヒロインがいないのに、それなりの攻略難易度でやり応えがあったな。
特に、フランダ攻略の際にはスフィアの好感度が一定以上必要となり、そのためにスフィアと接しているとスフィアに惹かれそうになる構成が、心揺さぶられてよかった!
ただ、トーカのせいであんまり集中はできなかったな……。
人前でエロゲーをやるのはもちろんなんだが、それ以上にトーカが序盤はずっとそわそわしてるし、終盤は耐性が付いたのかエロシーンになる度にものすごい覗き込んでくるしで気が散る。
最初のころも思ったけど、やっぱトーカって天使の割に俗だよな。
『ま、まあ、参考にはなりそうなんじゃない!?』
「そうだな。序盤の動きは勉強になったな。ただ問題は後半どうするかだ」
『後半は参考にできないの?』
「ちょっとな。フランダは人の恋人を
『どうするのよ?』
「……攻略を進めながら考えるかな。とりあえず、フランダみたいなヒロインは他のヒロインと仲良くし、プライドや略奪欲を刺激することがカギだということはわかった。ということで、まずは阿雲雷歌ではなく、阿雲風歌の好感度を上げにいく」
それと、他の奴らには露骨に友達感をアピールしないとな。
阿雲姉妹は学校での人気が高い。
そんな二人と接触する以上、注目は避けられないだろう。
今後の攻略を考えると、恋人関係なのではという疑念を掛けられないように立ち回らなくては。
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