あなたと触れるまであと1000mm

瑠栄

最悪な出会い

告白現場!?

「おはよー」


「はよ~」


 私・渡野梨奈わたのりなは、現在中学3年という青春アオハル真っただ中のJCだ。


 今日も今日とて、朝から明るい笑顔で挨拶をする。


「渡野さん、おはー」


「はy」


ー!!!」


"ガバッ"


 後ろから、クラスメイトの福本絢夏ふくもとあやかが抱き着いて来た。


 決して、絢夏が悪い訳じゃない。


 そうじゃないけど・・・。


"ビグッ"


 体が過剰に反応し、思わず喉がヒュッと小さく鳴る。


 神経が逆撫でされたように気分が悪くなり、思考が停止する。


「っ・・・。あー、はよはよ」


 ハッとして現実に戻り、適当にあしらって、相手が気分を害さないようにさりげなく体を離した。


「ちょっとぉ、扱い雑過ぎるぅ~ww」


 絢夏は、慣れたようにケラケラと楽し気に笑っている。


 体を離した事に対して怒っていないようで、内心ホッとする。


「福本ー?課題はー??」


「え、あったっけ!?」


「はぁ?国語の作文、あったろー??」


「わー、やってないぃぃ!!」


「早くしろ-。1時間目だぞ」


「やばいやばい!!」


 絢夏は、バタバタと騒がしく自分の席に戻っている。


「っふぅ・・・」


 深呼吸をして、鳥肌が立った腕を擦る。


 絢夏が毎朝抱き着いてくるけど、全く慣れない。


(ダメだな・・・)


"キーンコーンカーンコーン"


"ガララッ"


「授業始めるぞー」




* * *




"キーンコーン・・・"


「梨ー奈ー」


「はいはーい」


 昼休みになり、私と絢夏はいつも通り屋上へお弁当を持っていく。


「・・・あれ」


「どした?」


 扉を開けようとした絢夏が、首を傾げた。


「あっれ?開いてる」


「え、何で」


「さぁ・・・」


 屋上は眺めは良いけど、教室から遠くて昼休みにわざわざ来る人は少ない。


 だから、静かに食べれると思ってここに来てるんだけど・・・。


(今までの3年間、誰も来た事なかったのに)


"キィー"


 絢夏が静かに戸を開けると同時に、私達の耳に響いて来たのはソプラノボイスの女子生徒の声だった。


「先輩、好きですっ!!お、お付き合いしてください・・・!!!」


「「!!!???」」


 私達は、思わず顔を見合わせた。


 こ、告白現場・・・!?


「あ、絢夏・・・。今日は、別の所にしない・・・?」


 おそるおそる聞くと、絢夏は目を爛々と輝かせていた。


 私は、本能で察した。


(こ、これは・・・)


 嫌な予感が、的中してしまった。


「え、何で!?せっかくだから、見て来ーよ!!!」


(やっぱりー!!!!)


 私は、焦った。


 いや、だって、人様の告白だよ・・・!?


「絢夏、戻」


「行くよっ」


(わぁー!?)


 少しだけ袖を引っ張ると、絢夏は得意の馬鹿力で私ごと屋上内に侵入してしまった。


「っ、やばいって!!」


 入る時に見つかりはしなかったものの、かなり近距離だ。


 入り口挟んで向かい側。


(バレちゃう・・・!!!)


「『元々いました』って言えば、行けるって!!」


(そっちの方が、アウトだってー!!)


 心中で泣き叫ぶ私を置き去りにして、絢夏は食い入るように告白を見ている。


「・・・ありがとう」


 今度は、男子生徒の声が聞こえた。


「おお・・・!?」


 絢夏の口から、成功を期待させる声が漏れる。


(お、OK!?)


 告白現場・・・、しかもOK・・・!?


 内心ハッピーエンドを願っていた私は、小さくガッツポーズをした。


「えっ・・・///」


「でも、付き合えない」


「「「!!!???」」」


 私と絢夏は、思わず顔を見合わせた。


(ええ!?)

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