第13話 十三回目の【本当の】ログボは……


「何でだよ……」


 俺の頭の中に、ハトノショの声が蘇る。


『そうですけど……。私は今が……。今がとても楽しいんです……』


山田やまだマモルさんには私の気持ちなんて分からないですよ!』


 どことなく、悲しげに言った表情が、蘇る。


「何なんだよ……」


 何があったんだよ……アイツに……。


「教えてほしいゲロか?」


 振り返ると、ゲーミングチェアに座ったカエルが居た。

 カエルはもう、装備品を全て外している。そのかたわらではリオル・ダ・マオウフニャフニャが腕を組んで立っている。


「……おまえ知ってんのか? ハトノショのこと」


「知ってるゲロ」


「じゃあ何であんなことしたのか教えてくれ」


「ボクが言って良いゲロか?」


 は? と俺は聞き返す。


「ハトノショに会って、彼女に直接聞かなくて良いゲロか? 彼女の気持ちを覗き込むようなことをしても良いゲロか?」


「……それは……」


 俺が迷っていると、


「山田マモルくん、そういうことは自分で確かめた方が良いんじゃないかな?」


 と、リオル・ダ・マオウフニャフニャが口を開いた。


「もっとも、キミの良心が痛まなければ話は別だが」


 フッと、リオル・ダ・マオウフニャフニャはキザに笑った。


「俺は……」


 俺は……と続ける。


「……自分で確かめたい。あとさ……予感なんだけど……。今回でダメだったら、俺、多分もう現実世界で生きていけないと思う……。つーかもう、諦めてここで生きてくわ」


「諦めるって言葉は無かったんじゃないゲロ?」


「るせえ! もう吹っ切れたってやつだよ。これでダメだったら裏ボスでも何でも倒してやらあ! バカみてーに強いログボも貰ってるしな! そん時はおまえら協力しろよ! 腐れ縁ってやつだ!」


 カエルとリオル・ダ・マオウフニャフニャは顔を見合わせて、笑った。


「因みに十三回目のログボは何だよ? それ使えば裏ボスなんて楽勝だろ」


「あ~、十三回目のログボは薬草やくそうゲロ」


 なんでここで急激にグレードダウンすんの?


「終盤で宝箱開けたら中身が薬草だっていうのはRPGでは良くあることゲロ」


 知らねえよ。


不味まずそうだったけどケッコー美味しかったゲロよ?」


 だからなんでテメーいただいてんだっつーの。結局ログボ全部オマエが貰ってんじゃねーか。


「ふむ、確かになかなか美味びみだったなアレは」


 おまえも食ったんかいいいいいいいいいいいいいいいいいい。


「ちっ……。相変わらず好き勝手しやがって……」


「だって僕たち友達ゲロ? 固いこと言うなゲロ」


 俺たちいつ友達になったっけ?


 ……まあ、友達ってそういうもんか。


 うん……。


 いつの間にか、理由もなく――、


「ボクとも、だろ? 山田マモルくん」とリオル・ダ・マオウフニャフニャ。


 だよな、友達って。


 なろうとしてなる友達なんて、居ないはずだ。


 もし居るとしたら、それは……。


「ふん……。クセの強い友達が一気に二人も出来ちまったな……」


 俺の呟きに、二人はフフッと笑った。


「オーケー分かった。またこっちに戻ってきた時はヨロシク頼むぞ、二人とも」


 友達として、と俺は心の中でだけ続けていた。


「じゃあカエル、頼む」


「現実世界に帰るゲロか?」


「ああ」


 パッと、舞台は現実世界に戻った。間もなく、スマホにメールが届く。


『山田マモルさん。例の公園で待ってます』


 ハトノショからだ。

 あんなことを言った理由を、彼女に直接聞こう。

 そして……これでまた転生したら、諦めよう。

 諦めて異世界で生きていこう。

 これでラストにしよう。

 そう決めていた。

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