女子だけが【異能力】を扱える世界で静岡県民である私は、オタク生活を楽しみながら悪い敵をやっつけます!!

@umihono1021

戦うアイドル達

静岡県静岡市。人口約70万人のこの街は大都会とまではいかないが駅周辺は複数のデパート、高層ビルが立ち並び、静岡県で1位2位を争うほど賑わった街だ。



静岡駅から徒歩5分の場所に存在する利便性の良い場所に一つの高校があった。


静岡私立駿河学園。アイドルを育成する学校である。

しかし歌って踊るアイドルではない。


校庭の中央に2人の少女がいた。

取り巻きの生徒達が校庭の端で2人を応援していた。

片方は茶髪のミディアムヘアで緋目の快活そうな雰囲気の少女。

もう片方は金髪のウェーブがかかったロングヘア。蒼目で吊り目のいかにもプライドの高そうな美少女だ。


金髪の少女、エリノアが手のひらから雷を放出させる。



「ひまりさん、準備はいいかしら?」



ひまりと呼ばれた茶髪の少女は悲鳴のように叫ぶ。



「エリノアちゃんに勝てるわけないよーーー!ギブアップ!!」


「では模擬戦開始!!」


「おおい!!!」



ひまりの決死の制止を無視し開始を告げる教師。


「行きますわよ!」


エリノアが放出した雷を器用にバレーボールほどの大きさの球体に変化させ人差し指で弾く。


「やるしかないか!!来い!【ツヴァイハンダー】!!」


ひまりは掛け声と共に何もない空間から両刃の剣身が1.2m程の長剣を出現させた。


全体的に銀色の装飾がされている剣で、刃の幅が15cm程度ある非常に重さを感じさせる剣だ。


刃全体が紫のオーラに包まれている。


「ハァッ!!」


勢い良く剣を振り被ると、刃から紫の斬撃破が飛び出した。

斬撃破はそのまま雷に向かって突き進み、着弾する。


ドォォォォォン!!!とエリノアの攻撃とひまりの攻撃が炸裂する。

地面にヒビが入り砂埃が2人を覆う。


「やりますわね…」


賞賛と共にエリノアは手のひらに雷を溜める。

雷は徐々に直径2mほどのランス(槍)に変化した。


「これは防げますか!?」


ランスは夥しいほどの雷を帯電しており半径数メートルに渡り雷が迸っている。


「【雷電槍撃(らいでんそうげき)】」


「ちょいちょいちょい!!!!」


楽しそうにひまりに向かってランスを投げるエリノア。

それは先ほどの攻撃とは比べ物にならない破壊力を感じさせひまりは慌てて剣を構える。


「(これ撃つと結構腕に負担がかかるんだけど…)」


逡巡するひまりだが目の前の脅威の方が上だと考え、エリノアを倒すために全力を出す。



「【ヴァイオレット•ブラスト】!!!!」



技名を叫ぶとひまりの剣が一瞬発光し、刃から紫色の光が炎柱のように舞い上がる。

腕を上げ、その存在感をまわりに見せつける。

その光は街ゆくサラリーマンや主婦などにもみえておりパシャパシャと写真を撮る者もいた。



「避けてねエリノアちゃん!!」



ゴォォォォォォ!!!!!と地面が唸るような音と共に必殺の一撃がエリノアに襲いかかる。

エリノアの【雷電槍撃】など一瞬で吹き飛ばし、彼女自身に光が向かっていく。



「(避けるか…。駿河の名家である私が同学年の攻撃を避けるのは良くないかもしれませんわね。仕方ない、受けて立ちましょうか!)」



刹那、エリノアの周りに龍のような渦状の雷が出現する。

神話を再現したかのようにエリノアの周囲に雷が落ち、獣の吼える声がこだます。



「私の最強の技です…【ヴォルテックス・ディバイン】!!!」


その直後、ひまりの攻撃が直撃した。


バァァァァン!!!!という雷撃と爆発音が巻き起こる。

戦争が起きたのかと思うほどのその音は、静岡駅までその音は聞こえていた。


「マジかっ!!?」


ひまりの【ヴァイオレット•ブラスト】は直撃すれば建物すら粉々にできるほどの威力を持っている。

腕にかかる負担のため1日1回を限度としている必殺の一撃。


しかしエリノアの技はそんな一撃を真正面から受け続けている。


「ギブアップと言いなさいエリノアちゃん!!」


「ちっ…」


エリノアは予想外の反撃に苛立ちを隠せない。

一瞬でも気を抜くとひまりの攻撃に潰されると分かっていたからだ。


5秒経過。


エリノアは耐久勝負を覚悟したが、終わりの時はあっさりと来た。


突然ひまりの攻撃が止んだ。


「……?」


不思議に思いひまりに視線を向けるエリノア。

   


「ギブア〜ップ…」



ひまりが両腕を上げ、疲れ切ったようで降参のポーズをとっていた。

遠目でも両腕が赤く腫れているのが分かる。戦闘続行は不可能なようだ。


「ひまりさん…?」


「勝者エリノア!!」


教師が勝者を告げると周りから歓声が上がった。


「ひまり!!!」


そんなひまりに駆け寄る1人の少女がいた。青色のポニーテールの背の高い少女だ。


ひまりの幼馴染の松浦澪である。


「うぅ…澪ちゃん。私はもうダメみたいだよ。最期に静岡名物こっこを奢って欲しいな」


澪の体に寄りかかり茹だるひまり。


「そんなに話せりゃ大丈夫でしょう。保健室行くよ」


「あい」


澪に付き添われながら校庭を後にするひまり。

しかしそんな2人を不満げに睨みつける少女、エリノアがいた。


「…ふん」


「エリノアさん、流石『津島家』の当主候補ですね!素晴らしい戦いでした」



体育教師がエリノアを褒めちぎるが彼女はあまり嬉しそうではない。



「…ありがとうございます」



第二次世界大戦後、100人に1人の確率で15歳以上の少女達が超自然的な力を発現する現象が確認された。


電気を発する者、火を使う者、風を操る者、様々な能力の事をまとめて【スキル】という名称で定められた。


女性にしか現れず、スキルに目覚めるのが殆ど思春期であることから彼女らは【アイドル】と呼ばれていた。


力の使い方を学ばないと事故にも繋がる。

強力な力を持ったアイドルが暴走した場合、街一つがいとも容易く破壊される。

そうならないために全国各地にアイドルを育成する学校が作られたのだ。

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