第119話 相思相愛
◆◆◆
翌日。天気は快晴。所により──暴風。
場所は昨晩話した、魔法少女協会日本支部の演習場。俺とコメットは向かい合い、入念に準備体操をしていた。
「まったく……我々に相談もなく勝手に物事を進めるな、馬鹿者」
「いたっ。あはは……すんませんでした」
呆れ顔のリリーカさんに小突かれた。先走った俺が悪いから、何も言い返せない。
隣にいたビリュウさんが、警戒した面持ちでコメットを見る。ミニバハムートも、牙を剥いていた。
「ツグミ、大丈夫なの? 彼女、相当やるわよ。バハムートも威嚇しているし」
「わかってる。まあ大丈夫でしょう」
根拠はない。力の差を考えたら、お互いに軽傷じゃすまないかも。
しっかり全身の筋肉を伸ばし、コメットに目を向ける。今にも飛び掛かってきそうな、獰猛で快活な笑み。随分と信頼されてるなぁ、俺。
にこやかに彼女の闘争心を受け止めていると、キキョウさんが近付いてきた。
「ツグミ、わかってるね?」
「はい。……負けるつもりは、ありませんよ」
コメットの上司がなんと思おうと、知ったことではない。接待? 手加減? ナンセンスだ。戦うからには勝つ以外なし。
キキョウさんが俺らの丁度中心に立ち、交互に視線を送った。
「これより魔法少女ツグミ、魔法少女コメットによる、模擬戦闘を行う。双方、力の限りを尽くして頑張るように」
「はい」
「OK」
気が張り詰める。俺たちから迸る圧により、風が吹き荒れ髪が乱れた。
「ティナ……本気で行きマス」
「ええ。私も……トップギアです」
旗を揚げたキキョウさんが、大きく息を吸い……思い切り、振り下ろした。
初速から最高速で加速する俺とコメット。互いの拳同士が衝突した。
肉と骨がぶつかる鈍い音が響く。生まれた衝撃波により、草花が弾けて宙を舞った。
先に動いたのは俺。回し蹴りで脇腹を捉えるが、寸前のところでしゃがんで回避された。同時に、コメットの右手に青白い光りが……。
「セレスティアル」
「ッ!?」
体を仰け反らせる。眼前を青い閃光がかすめ、空間を大きく揺るがせる爆風が発生した。
っぶねぇ。今の当たったら負けてたぞ……!
バク転と同時に蹴りを顎下に入れるが、両腕をクロスして防がれた。
「このっ!」
「ウッ……!?」
瞬間的に蹴り脚にオーラを纏って増強し、上空に向けて蹴り飛ばす。俺だってパワー系魔法少女の矜持がある。こんなところで負けてられるか。
体勢を整えて全身からピンク色のオーラを迸らせ、跳躍。一瞬で肉薄し、拳を振り抜く。当たる……!
「ハァッ!!」
「うおっ!?」
腹部を捉える直前、コメットの全身から放たれた唐突な小爆発で、勢いを完全に殺された。ちくしょう、そんなんありか!
腕をクロスして小爆発を防ぐ。腕の間から、コメットが俺に向けて人差し指を伸ばしているのが見えた。
さっきより圧縮された青白い恒星が、世界を白に彩る。
やばい、これ。さっきの比じゃない……! 当たったら、最悪頭が吹き飛ぶッ!
本能が回避を選択し――黙ってろ、本能!!
「セレスティアル・レイ」
「おおおおおおおおおおおおおっ!!」
ド根性ヘッドバッド!!
放たれた光線に合わせ、人体で一番硬い頭に身体強化魔法を重ね、頭突きをぶつける。
気を抜くなっ、強化魔法を解くなっ。意識を繋げ、闘志を燃やせ! 一瞬でも油断したらそのまま持っていかれるぞッ!
青とピンクの閃光がぶつかり合い、轟音と衝撃を伴って周囲の地面を抉る。
時間にして数秒か、数十秒か……コメットの魔法が途切れ、揃って地面に降り立った。
「Wow…今の技を止められたの、2人目デス」
「もう1人は上司とかですか?」
「YES. あの人もmonsterですが、ティナの方がmonsterデス。頭で受けたんデスカラ」
「あはは……こちらも必死だったもので」
咄嗟だったとは言え、今のは確かに危ない。下手したらマジで死んじゃう。もう二度とやらん。
「But, 今のを受けられるのなら……もう少し、大きい技でも問題なさそうデスネ」
と、コメットの目に星が宿り……全身を星屑の光りが覆った。地面にヒビが入り、崩れた土や草花が宙に浮かび上がる。
迸るオーラの量が、これまで見たものとは桁が違う。物理的に肌を突き刺し、痛みが走った。
「やはり凄いですね、ライス。こんなに強い闘気をぶつけられたの、初めてです」
「怖いデスカ?」
「いえ……滾ります」
俺も全身からピンクのオーラを迸らせ、コメットに対抗する。互いの光りが衝突し、押し相撲のように競り合う。
火花が散り、雷が発生し、暴風が吹き荒れ……弾ける。
周りがオーラの残滓で破壊される中、俺たちは同時に駆け出した。
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