第9話 星空の約束

越後湯沢の冬の夜は、星がきらめく寒さだ。るんちゃんは「気まぐれ卵」の店を閉めた後、一息ついてから外に出た。息が白く霧となって消えていく。彼女は店の前の小道を歩き、冷たい空気を深く吸い込みながら、一日の疲れを癒やしていた。


突然、遠くから足音が聞こえてきた。音は徐々に大きくなり、るんちゃんの元へと近づいてきた。来たのは、町の若い画家、ケンジだった。「こんばんは、るんちゃん。ちょっといいかな?」


ケンジは手に小さな箱を持っていた。彼はその箱をるんちゃんに差し出し、「これ、君に見てほしいものが入ってるんだ」と言った。箱の中には、美しく描かれた越後湯沢の冬景色と、中央に温泉卵が描かれた絵が入っていた。


「わたしの温泉卵を描いてくれたの?」るんちゃんが驚きを隠せずに尋ねると、ケンジは頷き、「君の卵には特別な魅力がある。それを形にしたかったんだ」と語った。絵はるんちゃんの卵の暖かさと、越後湯沢の美しさを見事に捉えていた。


感動したるんちゃんは、ケンジに深く感謝した。「これからも、あなたのような才能ある人々と一緒に、この町を盛り上げていきたい」と言うと、ケンジは嬉しそうに笑った。


二人はそのまま小道を歩き、夜空に輝く星を眺めながら、これからの町の未来について語り合った。越後湯沢の星空の下で交わされた約束は、二人の間に新たな絆を築き、るんちゃんの心に新しい希望の光を灯した。


るんちゃんは、ケンジとともにこれからも町のため、そして「気まぐれ卵」のために新しい挑戦をしていくことを心に誓った。その夜、るんちゃんは星空に誓いを立てながら、越後湯沢の温もりを全国に広めていく決意を固めた。

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