第12話 拒絶

 その時、俺のスマホで何かの通知音が鳴った。

 お陰で俺は我に返った。


 駄目だ。

 この子は未成年だし。

 ホテルに二人っきりなんて、状況が悪すぎる。

 しかも、相手は上半身裸で、俺はさっき背中を触って、肩までもんでやったじゃないか。

 さっき現金二万円も渡してしまった!

完全に児童買春の状況証拠が揃っている。


 俺は慌てて彼を振り払うと、立ち上がった。


「君は未成年だし、俺はまだ既婚者だから、やめよう。十八歳になったら、また会おう。それに、俺はゲイじゃないし。ごめん」


 俺はそう言うと、後ろを振り返らずに部屋を後にした。


「待ってください!」彼は最後まで叫んでいた。


 もしかしたら、脅迫されるんじゃ。

 俺は怖くなった。


 きっとそうだ。

 俺も闇金に脅される。

 彼は俺を闇金に売ったんだ!

 自分がタイに行かずに済むなら、サラリーマン一人差し出すなんて訳のないことなのだ。

 

 俺の残りの人生は、闇金から金を吸い取られる奴隷のような生活が待っているんだ!


 あまり自分とかけ離れた立場の人と親しくしないように。と、親にも口をすっぱくして言われていた。こういう層の人の生活は腐りすぎて救いがないんだ。俺はそれを知らずに生きて来たんだ。脇が甘すぎた。


 俺はパニックに陥った。


その後、どうやって家に帰ったか覚えていない。

 

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