第3怪
午後七時、怪研メンバーは校門に集まっていた。部長が静かに部員を見渡す。
「よし、みんな揃ったな。まず検証する七不思議をおさらいしよう」
部員たちが各々知っている七不思議を言い合う。
「校長室の肖像画が全部同じ顔。っての知ってる」
「無難にトイレの花子さんとかもどうでしょう?」
「夜の学校は幽霊の時間。あるあるだけど」
部長が集まった七不思議を地面に書き出す。
《学校の七不思議》
・校長室の肖像画は同じ顔
・夜の学校は幽霊の時間
・トイレの花子さん
・夜の学校では妖怪に喰われる
・階段で怪談をしてはいけない
・ベートーヴェンの目から血の涙が出る
・夜の教室で幽霊を見たら帰れなくなる
・動く理科室の人体模型
・頭でバスケをする少年
「って七不思議どころか九不思議やないかい! たくさんありすぎ!」
思わず美玲がツッコミを入れる。それに反応する声があった。
「知ってるものを出し合っただけですからね、本物とニセモノが混じって多くなったんでしょう」
部員以外の声に皆が注目する。暫く沈黙が続き、純が口を開いた。
「えっと誰? 昼間紹介しきれなかった部員?」
すると美玲が大声で叫ぶ。
「あっ、新聞部のあずきちゃん! なんでここに?!」
その少女が申し遅れましたと挨拶をする。
「どうも、新聞部一年の佐藤あずきです! 今日は交換留学生と転校生の初部活と聞いてやって来ました!」
新聞部、学校内のあらゆる情報をいち早く全校に届ける部活。ネタのためなら捏造も惜しまない捕まると少々厄介な部活動だ。
「うーむ、まぁいいだろう。今日は新聞部の佐藤あずきとコラボってことで。その後分かれるつもりだったし!」
チームに分かれて行動をする。そのチーム分けはジャンケンによりこうなった。
《チーム》
・美玲&純
・部長&ルルカ
・京子&真野&あずき
美玲&純チームは『校長の肖像画は同じ顔』という七不思議を検証しに一階廊下を歩いていた。
「校長室は怪奇研究部の部室になったから、今は職員室に飾られてると思うんだよね」
昼とは違う雰囲気を放つ廊下。ふと足元にふわりと何かが通る。
「いやぁぁぁぁ! な、なに?!」
私は思わず純に飛びついてしまった。
「ちょっ、それが一番びっくりするから辞めて……つかただの風だろ。ほら、窓空いてんじゃん」
一つだけ開いている窓。違和感。普通ではあり得ない現象に美玲は疑問を純に投げかけた。
「どうして空いてるんだろう」
「閉め忘れただけだろ」
「だって学校の先生って、誰か一人は生徒が帰った夜九時くらいまで残ってるんだよね、私たちはその先生の目を掻い潜って侵入したわけだけど。見回りもするだろうし職員室近くの窓を閉め忘れるなんて初歩的なミス、しないでしょ」
「ん? まぁ確かにそうか。でも俺たち、誰にもすれ違わなかったぞ。二階、三階は他のやつらが見てるだろうし、先生居るなら確実にもう怒られてるはず……というか……」
電気一つ付いてなかっただろ。
その時だった。後ろから誰かにライトで照らされる。私は瞬間的に先生だと思い、謝罪体制に入る。
「うわっ、すみません! 出来心だったんです!」
しかし、何も言われない。すると純が冷静に言った。
「いや、違う。アレは先生じゃない!」
ふと光の方を見るとそこにいたのは学校の誰でもない先生。先生なのかも怪しいカーキ色をしたシワだらけの服を着ていた。あの服は何だろうか、至る所に土と血が付いていた。顔は……見えない。
『あ……アァ……ガァァァァ!!』
ナニかは美玲たちに向かって得体の知れない言葉を喋っている。
「『こんな時間に何してる?』だって!? 関係ねぇだろうが!」
「えっ?! 純、何言ってるか分かるの?」
すると美玲たちに向かって走ってきた。
「とにかく逃げるぞ!」
純が美玲の手を取り走り出し、廊下の突き当たりを曲がり階段へ向かう。
「ちょっ、ごめんはやっ……早いよ!」
美玲は純のスピードに付いていけず、減速する。ナニかはどんどん近づいて来ている。追いつかれると思った矢先、純が覚悟を決めたような顔をして言い放った。
「チッ……悪鬼から護りたまえ!
純は廊下の端から端を指で切るように線を引く動作をする。すると見えない壁に当たったかのようにナニかはこちらに向かって来なくなった。
「行くぞ! 美玲」
二階へ上がり、一年一組の部屋に逃げ込んだ。あれは何だったんだろうか。この学校に住まう霊だったのか。しかし、それ以前に謎がある。純はどうして得体の知れない言葉を読み取れたのか、動きを封じ込めたのは何故なのか。
「ねぇ……純……」
美玲が口を開くと、それを遮るように純が口を開いた。
「ごめん!」
開口一番に言ったのは言い訳でも何でもなかった。ただの謝罪だ。
「えっ、何で純が謝るの?!」
「黙ってた、今までずっと。変に思われるのが嫌だったんだ」
「それはさっきの、霊能力? みたいなのがあるってことを……ってこと?」
純はコクりと頷いた。
「どうしても見えない人からしたら理解出来ない力だから言えなかったんだ。今のは
「凄い! 必殺技みたいだね!」
私の言葉に純は少し驚いたようだった。
「えっ、怖くないの?」
「何で怖がる必要があるの?」
「だって昔からみんなと違って学校でも……いや、そういや美玲はそういう奴だったな」
そう言った純は笑っていた。
「まぁそれは良いとして、今のは必殺技でも何でもないぞ。面の数によって線も変わるんだ。今は一面しか張ってないから一線。確実にその場に閉じ込めるには三面は必要だよなぁ、急いでたからそこまで考えてなかったけど。今からでも祓いに行くべきか」
お祓いという言葉に怪奇研究部員である私はワクワクしていた。しかしそこにとある放送が入る。
『ザァー…か……み…こ……ザザッ……す……し…ね』
「じゅ、純。今……校内放送なんて言ってた?」
繰り返し放送が流れる。美玲たちは流れた内容に今までにない恐怖を感じ、一気に血の気が引いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます