第1話.よくある触手の話です③
「はい、おまち。生前強制小型化デバフ付与からの媚薬漬けエナジードレインで猛威を振るったウツボカズラ型触手モンスターの飯詰めだ」
「ついに生前情報隠さないようになっちゃったな」
ドン、と目の前に出されたそれは袋状になった部分に米がぎっしりと詰め込まれていた。生前数多のゴビロ界隈の人間を小型化させ引き摺り込んできたらしいその部分に鶏と牛蒡の炊き込みご飯が詰め込まれるとは、本触手にとってもあまり予想できなかったのではなかろうか。どれだけ金に目が眩んだ馬鹿どもを蹂躙しても、ひとたび捉えられれば胃に収まるというのだからこの世はままならない。
「植物型触手型は媚薬とセットで猛威を振るうことが多いよ」
「そうなんだ…」
「そう。植物型はその場所に根を張ったら動き回れない分、栄養源にするのが目的だからね。動物型は繁殖目的が多いから苗床にされることが多いけど」
「それでいうと植物型の方が初心者向け?」
「体の負担だけで言えばそうかも?まあでも快楽責めはきっついしよくぐちょぐちょになってるのはこのタイプの仕事だよ」
「あーね…」
動物型は出産で、植物型は快楽地獄で精神に負荷がかかりやすいという。そんな思いをしてまでここにいることを選んだのは彼女ら自身だが、それでもこの世は概ね金を楽に稼ぐことはできないため、仕方がないと言えば仕方がなかった。炊き込みご飯をつまみながらパウカが言う。
「結局この界隈碌でもねえな」
「それな」
でも、とヨミが味噌煮と共に酒を煽った後言葉を続ける。
「金がいるじゃんね、生きるには」
「それはそう」
やべえ生物を産み落とそうがやべえブツを生やされようが、この界隈から抜け出さない彼女たちは、今後も当たり前のように金が必要なのだ。だから世界に対する諦めを見出しながら、彼女らはせめてもの抵抗で情報と食を摂取し、明日への糧を得ようとする。
「じゃあ次は触手服の話でもいっとく?」
「ん、よろしく」
******************
その数日後、とある触手アンソロ案件をこなしたパウカは身体の穴という穴から体液を撒き散らしながら、ヨミは裏側がモゾモゾと蠢く触手に覆われた鎧をまとって喘ぎながら、死んだ魚の目をした聖職者たちの治療をうける羽目になる。
「「やっぱりエロ作品はもうこりごりだぁ〜〜〜!!!!」」
そう言いながら回復後には当たり前のようにけろりと酒を飲む二人は、多分自分からこの界隈から抜ける日は来ないだろうことは想像に難くなかった。
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