○ロ作品はもうごりごりだぁ〜〜!!

中田かなめ

第0話

 様々な世界線が交差する位置には、いくつか街が存在している。そこに行くのは存外簡単だ。各世界に存在する扉を開けて、一歩踏み出すだけでいい。ちなみに扉の分布はどの世界においても大体日本におけるコンビニエンスストアと同じくらいだ。ド田舎なら車がないと厳しいが、それなりに栄えているところなら徒歩で行ける範囲にだいたいある。どの街も出稼ぎの労働者が多く滞在したことで栄えたため、その名残か今でも宿泊施設が多く立ち並んでいる。


労働者達の仕事は「様々な世界線で与えられた役割を果たすこと」である。これはどの街においても共通している。労働者達は街の中央に位置する巨大な掲示板に随時自動で更新されていく求人票を手にした後、大抵の場合はその世界線の説明を始めとしたチュートリアルを受けて仕事に向かう。街ごとに大きく違うのは、各街に配布される求人票のタイプだ。いわゆる異世界で無双するタイプの主人公の求人票が更新される街もあれば、悪役を生業とする者達を求める街もある。最も規模が大きいのは、主人公達の脇を固めるモブキャラクターの求人が更新される街だ。つまりこうした街は全て、様々な作品の登場人物達が集い、職を手にするための場なのだ。


───そしてその中でも、一際異様な街がある。


世界を救う主人公気質の者が集うには荒んでいるが、悪役が集うにしては穏やかだ。街をゆく労働者達も、平凡顔から美形、ロリショタから熟女おっさんまで様々だ。共通点といえば、大体目が死んでいることくらいか。たまにガンギマリの目やイキイキとした目もいることにはいるが、圧倒的に少数だ。


そして一際目立つのは、神殿を模した重厚なつくりの建物である。なお荘厳な雰囲気はない。天使やら妖精やら各世界線に存在する宗教の中で神聖なものとされる存在をモチーフにしたやつをとりあえず置いときゃなんかそれっぽく見えるやろの精神で作られた銅像やら装飾やらがあちこちに置かれたり散りばめられたりしているためだ。統一感がまるでない。つくりだけは立派な扉を開けると、そこには大体この世の地獄トップスリーにランクインしそうな光景が広がっている。


ビューー!!ドク!!ドクッ!!ドピュ♡ショワアー…♡


「んほおーーー!!!!!!♡♡♡」「イク♡♡♡イクッ!!!!」「イダダダダ!!!!待って無理痛い!!!!」「エロトラップダンジョンって聞いた!!!!エロトラップダンジョンって聞いたのに!!!!」


嬌声をあげながら両乳首から母乳を撒き散らす少年、華奢な体躯に見合わない巨根を生やして白濁を撒き散らす幼女、内臓を手で押さえながら「俺だけ!!俺だけこんなの!!」と喚く青年、エトセトラエトセトラ。そのほかにもあらゆる体液を撒き散らしながら悲鳴を上げる老若男女と、それらを無表情で治療する聖職者と医者。誰も幸せになっていない。最悪である。


その地獄の光景を無視して突き進んだその先に、「カフェ&バー ゴビロ」は存在している。


これはそんな地獄の突き当たりに存在する憩いの場・「カフェ&バー ゴビロ」にて、「大体『ロ』で終わるジャンルの作品の登場人物」達があらゆる体液とクダを撒きながら明日をイク為の力を蓄える、そんなありふれた日常のほのぼのストーリーである。

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