第30話【軍人の過去episode3】
俺を救ってくれた軍人、いや隊長がその席を降りた。
隊長「雄介。俺はもう36歳だからな。現役ではいられない。指示役にまわるとするよ」
隊長は俺にそういった。俺は隊長の辞任が名残惜しいような感じがして喋れなかった。その時俺は15歳。しかし俺は隊長が裏方の仕事をしてくれると言ってくれたことがうれしかった。だが、その嬉しさは...すぐに砕け散るのだった...
新しい隊長が決まった。その隊長は別の部署のお偉いさんらしい。しかし俺らが属している部署と根本的なやりかた、考え方が異なっていた。そして新隊長は早速...独裁を始めやがったんだ。
新隊長「まずは元隊長をクビにする。そして討伐は依頼者の払った金額に応じて行うことにする」
俺も他の隊員も意味が分かっていなかった。新隊長の考え方はこうだ。依頼者が大金を出せば完璧に任務を遂行し、金が少なければ任務はあえて手を抜くという金を巻き上げるもの。そして何よりも納得がいかなかったのは元隊長の解雇だった。
俺は即座に声をあげる。
雄介「どういうことだ!あのお方がクビだなんて...!」
すると新隊長は俺を睨み、ドスのきいた低い声でこう答えてきた。
新隊長「黙れ。俺と考え方を合わせないやつはこの組織から消える。当たり前だろう?」
どうやら元隊長は新隊長のやり方に反対し、直接抗議をした。しかしその結果元隊長はこの組織にいられなくなってしまった。そして新隊長はそんな元隊長の右腕に属していた俺に対して無茶な要求を何度もしてきやがったんだ。
新隊長「組織の宣伝でもして金を巻き上げてこい。拒否したら生活ができなくなるぞ」
新隊長「募金を偽って金を巻き上げろ。さもなくば処刑だ」
新隊長「お前は毎食わさびな。食わなければ解雇」
俺は生活の危機をチラつかされ、拒否することができなかった。そんな理不尽を受け続けて3年。俺はとある任務を言い渡された。
依頼者「俺のママを殺したクズを...殺してほしいんだ」
依頼者は10歳ぐらいだろうか、母を殺され、失ってしまったらしい。
雄介「その犯人って...誰かわかるのかな?」
雄介(頼む!分かっててくれ!分かってればお金を取る量が減るんだ!)
すると依頼者は俯き、涙を零しながらこう言った。
依頼者「犯人は...この目で見た...パパだ...!」
俺は驚いた。だってこの依頼者...俺のほぼ同じ境遇だからだ。
きっとこれは運命だ。そんなことを感じた俺は依頼者に告げる。
雄介「お金...ないよな?払わなくていい。全部俺が終わらせるから」
依頼者「え...いいの?」
俺はそう言う依頼者に笑顔を見せた。すると依頼者は涙を零しながら笑って、俺に感謝した。
依頼者「ありがとう...ありがとう...ありがとう...!」
元隊長が助けてくれたように...俺が今度は少年を救うんだ。
俺が任務に出向こうとしたとき、新隊長が声をかけてきた。新隊長はどこか怒っているような...そんな雰囲気を感じる。
新隊長「貴様...無償で任務を受け取りやがったな...?」
ああ。誰かが告げ口したのか。俺は開き直って言い放った。
雄介「ああ。やったさ。しかし俺と同じ境遇のやつを見捨てるわけにはいかない!」
新隊長は一瞬驚いたような表情を見せる。当たり前だ。俺はほとんど反抗してこなかったからな。新隊長はその後、怒り狂って俺にこう言い放った。
新隊長「もういい!貴様は除名だ!荷物すべてまとめて出ていきやがれ!」
雄介「望むところだ!こんなクソ組織にいていられるかよ!」
今までの給料はかなりたまっている。しばらく生活する分には問題ないだろうと思い、俺はその指示を了承した。俺が最後の任務に行こうと、荷物をまとめると...
新隊長「ああそうだ。元隊長からの伝言でな...お前たちが出会ったところに現れた悪魔を討伐しろとのことだ...」
新隊長(嘘だがな...面倒な仕事を押し付ければそこらへんで勝手に野垂れ死ぬだろ!ヘヘヘ...)
俺はその発言を嘘だと見抜いたが、あえて了承してやった。俺がその悪魔を倒したとの情報が入れば俺を除名させたことを後悔するはずだからな。
こうして俺の11年間の軍人生活は幕を閉じた。しかし最後の任務が残っている。俺と同じ境遇の少年を救うために俺は走り出すのであった...
次回に続く!
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