1-8計画の一手目
そして淡々と話を進めていく。
「ならまずは、彼女らの好みを知った方が良いな」
「……櫓さん調べてあったりしないんですか」
「もちろん知っている」
「じゃあ買います」
「駄目だ」
「え? 珍しいこと言うね?」
「私が知っている情報と君が合致しないからな。だから余計に苦労したんだ」
「……二人とも本当に僕が好きなの?」
「君が直接訊いてくれ」
「いやでも今の状態だと、なんて言うか、結局僕ってことにならない?」
「大した自信だな」
「自信とかじゃないって! 逆だよ。僕に抜き出た良い所が無いのに好かれてるんだから、適当に僕じゃないと駄目とか言われるんじゃないかって」
「まあ、その可能性もあるな。その場合は腹くくれ。だが言っただろう? 今はまだ不安定な状態だと。君はどちらとも付き合いが浅いからな。そういった場合でこそ本人に直接言って意識させ、見定めようと考えるはずだ」
「見定めまで、ですか」
僕は呆けたように繰り返した。
「例を出してみるか。男はある女が好きだ。女の方もその男のことを悪くは思っていない。男がその女に好きになってもらうにはどうする?」
「その女性の好みになれれば良いよね」
「そうだな。それにはまず知る必要があるから男が女の好みを訊いた。すると、面白い人が好きだと分かった。そうして男は面白くなろうと意識したが、結局その女には合わなかった。この後どうなると思う?」
「女性は付き合おうとは思わない、かな」
「そうだ。つまり、それまでの関係が前提だが、男が訊いてから意識しているだろうことをその女も意識したし、その結果として合う合わないを見定められたわけだ」
切ないな、その人。
「もし訊かずに合わない人柄だったらなんとなくで流れるからな」
「なるほど。そうすると僕の場合、わざわざ訊いたのに真逆のことをしている印象を与えられるし、そんな状況でより合った人が現れたらそっちに行くってことか……」
不安は多い。けどいつ二人の決意が固まるとも限らないのだから、悩んでも渋ってもいられない。
櫓が考える良い手段に、僕が反対する点も無く、後は実行するのみだ。
と、いきなり櫓が鼻で笑った。
「しかし君島奏向をね」
「な、何?」
「君がそういった結論を出したから言うが、やはり正直二人から好かれるようにはとても」
そう言って首を振った。
「ちょっと傷付きますよ? まあ、納得している自分もいますけど」
「確かに、可愛いかもしれないが」
「え? あ……ありがとう」
「付き合ったら頼りないに変わっていくとしか思えない」
「突き付けないでください! またそうやって……。僕そんなに良いところ無しですか?」
「良いところ……」
空を見て、また僕を見た。
「いじり甲斐があるところ」
「その評価櫓さんだけですって」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます