ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。

荒井竜馬

第1話 追放


「ソータ。今ここでお前を『黒龍の牙』から追放とする」


パーティのリーダーであるオリバは、冷酷な顔で俺にそう言った。


「そ、そんな」


S級パーティ『黒龍の牙』。数年でS級まで登りつめた実績、周りからも一目置かれているパーティだ。


 本来、俺なんか所属できないパーティなのだが、何の偶然か俺はそのパーティに拾われた。


 それから数年間一緒に旅をしてきたというのに……


「な、なんで?」


 冒険者ギルドから調査依頼を受けた帰り道、険しい山を下っている最中。


 俺は突然の追放を言い渡された。


「なんでだと? 理由も分からんのか」


 オリバはぴしっと俺を指さすと、眉間に皺を入れる。


「いつまでも成長が見られないからだ。基礎的な魔法しか使えないガキがいても邪魔なんだよ」


「で、でも、今まではそれでも一緒にいてくれたじゃないですか」


「それはおまえがもっとガキだったのに魔法を使えたからだ。今、おまえは10歳だろ? その年齢になれば、才能がある奴は最低でも中級魔法くらいは使えるんだよ」


「それは、そうかもしれないけど、」


 確かに、俺は他のパーティメンバーに比べて年齢も幼く、色々と迷惑をかけている。


 戦闘中にできることは基本的な支援魔法と、回復魔法くらいだ。


 足を引っ張っていることは自覚していたから、雑用などをやって少しでもパーティに貢献しようとしていた。


 最近、あたりが厳しくなってきたとは思っていたけど、それでも一緒にいてくれるパーティメンバーのことを本当の仲間だと思っていたのに、急に追放だなんて酷くないか?


「たっく、おまえらが神童だっていうから拾ったのによ」


 オリバはそう言うと、目を細めて他のパーティメンバーを見る。


 視線を向けられた魔術師のリリスと、僧侶のナナ、盾使いのロードは息を合わせたようにため息を漏らして、順々に言葉を続ける。


「あんなに幼い子が魔法を使えればそう思うって。普通、ここまで成長しないなんて考えられないから」


「私たちがあなたを拾った時が、あなたのピークだったのですね。ただの成長の早い子ども。それだけだったみたいです」


「弱肉強食。どうせ、鍛錬を怠っていたんだろ? 切り捨てられるのも当然だ」


 三人は思い思いそう言うと、俺に背を向けた。


「つまり、満場一致ってことだ」


 オリバはニヤッと笑ってから、剣を引き抜いて俺に切っ先を向けてきた。


「な、何をする気ですか?」


「ただおまえを追放しても、俺たちが育成に失敗したって思われるだろ? ウィンウィンにいこうや」


 オリバはそう言うと、俺の胸当てに切っ先を押し当てる。


 そして、そのままオリバは切っ先で俺の胸当てを強く押してきた。


 剣士のオリバの力は強く、俺は一気に後方に押される形になる。


「え?」


 よろけて足を着こうとしたのだが、そこに地面はなかった。


 驚いて振り向いた先にあったのは、真っ暗な崖。


「『追放』よりも、『殉職』の方が華があるだろ?」


 オリバの嘲笑うような笑みを最後に、俺はそのまま崖へと落ちていくのだった。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

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