第21話 変わり者のエリオット様

「いや、なんでもねえ…」

「そうですか…?」

「……」


エリオット様は抱きついたまま黙ってしまった。さすがに適当に扱いすぎたかな?と思ってペンを置きエリオット様の顔を覗くと、不貞腐れた顔をしている。


「あら、拗ねましたか?」

「…違う」


そう言いつつもエリオット様は頬を膨らませる。


「はいはい…」

「……!」


私は作業に戻りつつ、何となくペンを持っていない左手でエリオット様の頭を撫でてあげた。意外と髪の毛は柔らかく撫で心地がいい。


なんだかこうしてると昔のリナを思い出すな…うちに引き取られたばかりのときはほんとに泣き虫で、その度に抱きしめて泣き止むまで頭撫でてあげたりしたっけ…


…エリオット様は確か20歳かそこらだけど。


「なあ…」


しまった、怒ったかな?


「…たまにでいいから、またこうしてくれよ。」


あれ、意外と気に入った?


「まあ…機会があれば。ところでそろそろ離れて頂いてもよろしいですか?」

「あー…そうだな。」


――――――


「よし、終わった!」


あれから数時間、日が沈みきる前にようやく論文モドキを書き上げた。


「お、やっと終わったか。」

「!?…ってエリオット様、まだいらっしゃったんですか??」

「ああ、たまにはソファーで菓子食べながらダラダラするのも悪くねえな。」

「それなら家でくつろげばいいじゃないですか…副騎士団長なら自分の屋敷があるのではないですか?」

「あるっちゃあるが、ゆっくりしたくても女の子がひっきりなしに訪ねてくるからできねえんだよ。」


何、その面白い状況。うちなんてお茶会とか以外ではオスカル殿下とお父様の部下くらいしか来ないけど…


「へー」

「なんだ、お前も来たくなったのか?」

「いや、どちらかと言うとその状況を第三者目線で観察してみたいというか…」

「うん…?」


「お、終わったか?お嬢ちゃん」


そこへ来たのはダグラスさんだ。


「あ、はい!確認お願いします。」

「どれどれ…"複数属性の魔法使用の可能性について"か、ハハッ、やっぱり面白いこと考えやがる!じゃあ、これは後でゆっくり読ませてもらうぞ。」

「はい」

「じゃあ、今日は終わりだ!今日に限らず、仕事が終わったら寮で休んでも外で遊んできても自由にしてもらって構わねえ。ただ緊急事態のときに寮にいたら引っ張りだされて働かされることもあるから、それだけ気をつけておけよ!」

「わかりました!ではまた明日」


こうして私はデスクのあった業務室を後にした


…ら、何故かエリオット様もついてきた。


「あの…」

「なあ、この後暇なんだろ?じゃあ街まで飯食いに行かねえ?」


確かに暇だけど、暇なら本を読むか魔導具をいじるかしたい。


「いや、ちょっと…」

「この前のぶつかったときの詫びと思って、な?」

「…わかりました…」

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