第三話 商人との会話、魔王と勇者
アルデンさんに案内されて橋まで行き、アルデンさん+村人達と合流すると、俺は質問攻めにあう。
「なんでそんな素晴らしい演奏ができるの!?」
「あなた何者なの!? どこから来たの!? 名前は!?」
俺がその勢いに身じろぎし、オロオロしていると、
「おい! そんなに一気に質問してやるなよ、困惑してるじゃねぇか」
と、アルデンさんが大きな声で俺を助けてくれた、ありがたい……
ある程度落ち着いたところで、アルデンさんの馬車に乗せてもらいながら話す、村人たちも空気を読んで帰ったようだ。
「で、お前さんはなんでこんな森の中にいるんだ? スーツを着てバイオリン担いでよ。」
「信じられないかもしれないんですけど……俺は別の世界から『転生』してきたんです。」
「転生…? もしかしてお前さん『勇者』か?」
「『勇者』? いえ、俺はただの演奏家です。その『勇者』というのはなんなんですか?」
「この世界には『魔王』っていう、この世界の魔物を統べ、世界を支配しようとする存在がいてな、そいつをぶっ倒して世界を平和にするために、王都の連中が別の世界から人を『召喚』するんだとよ。そいつのことを『勇者』っていうんだ。」
なるほどな……魔王はシューベルトが作曲した曲のタイトルにもなっているし、ある程度どんな存在かは想像がつくな。魔物というのも俺が想像している通りの怪物のような存在だろう。
王都というのは、ヨーロッパに多く見られる、国王が権力を支配している君主制国家だ。
この世界はある程度文明が発達していて、国家まで存在しているのか……少しずつこの世界のことが分かってきたな。
「そんな人がいるんですか、だけど俺は王都の人たちに召喚されたわけではないから勇者ではないんじゃないかな…? それに俺は運動が得意だったり、戦闘が強いというわけでもないですし。」
「そうか、まあお前さんが勇者でもそうじゃなくてもどっちでもいいさ、俺も勇者のことに特別詳しいってわけじゃないしな。ところでお前さん行く当てはあるのか?」
「いや、俺はまだ転生したばかりでどこにも……」
「じゃあ俺の村に来いよ! 行く場所が決まるまで、簡単な食事と寝る場所ぐらいは出してやる」
「え!? いや、そんなの申し訳ないです! それに、俺のような得体のしれない人を村に招くのはリスクがありますって……!」
「なぁに、気にすることはねぇよ。あんな心に響く演奏できる奴がワルモンなわけねぇからな! 他の連中も同じこと思ってるはずさ。ああ、もちろんタダお前さんを養うわけにはいかねぇからな、そのバイオリンでたくさん演奏してもらうことになるぜ! がっはっは!」
なんていい人なんだろう……異世界に転生して少し不安なところもあったけど、最初に出会った人がこの人で良かった……! 今はご厚意に甘えて、その村で過ごさせてもらおう。
「ありがとうございます……! 俺、頑張って演奏しますから!」
「はっはっは! そいつは楽しみだな、それじゃあ村に行くぜ!」
俺たちは馬車に揺られながら、アルデンさんの住む村に向かうのだった……
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