第3話 一行怪談3
玄関先の夫に私の声で心中を持ちかける黒猫は、私が昨夜轢き殺した猫と同じく赤い首輪をしており、まだ諦めていなかったのかと腹立たしく思いつつ、虚ろな顔をした夫を尻目に猫の背中に包丁を突き立てる。
母が苦手だと言った隣人の顔が、母が学生の頃に行方不明になった母の元恋人の当時の姿に似ている気がする。
父が好物の枝豆を食べなくなった理由は、枝豆の中身の一つに乳歯があったからです。
ゲームを起動したいのに、「あなたがかつて犯した罪の中で一番重いものを何ですか?」という質問が画面に現れてしまい、友人たちの前で己が犯した罪を晒せるわけもなく、当たり障りのない子どもの頃の悪戯の内容を入力しては「違います」という返答が返ってくること十数分。
「夢の中で逃げても逃げても死んだあの子が先回りしているから逃げられない」と夢から醒めた妻が今朝から錯乱しているが、彼女が話すあの子というのはどうやら私たちの娘だが、娘は成人してとっくに家を出ており、昨日は娘が孫を産んだと婿から連絡があったばかりだ。
友人が彼女を連れて私の家に来たのだが、嬉しそうに笑う友人が抱いているのは私が誤って殺した女が着ていた服。
返ってきた山彦の声は、数日前に事故死した担任の声。
弟の部屋から話し声が聞こえるので中を覗き見ると、弟の左半身と右半身が分かれてどちらがより優秀かを言い争っていた。
ベランダに垂れ下がる人の背丈ほどの巨大なセミの脱け殻を見て、この時期が来たのかと季節の変わり目を実感する。
息子がよく見る戦隊ものに登場する怪人の名前が、ことごとく私が自殺に追いやった奴らの名前。
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