4 「隣にいて欲しい」


昼の12時。


いつもなら聖也が来る時間だが、今日は俺が忙しい日だと分かっていて来ない。


というか、聖也に頼まれた仕事もある。


聖也に仕事を手伝わされる=聖也も忙しいということだ。


いつもみたいに、一緒にお昼を食べに行く余裕はお互いない。



「課長、休憩いただきます」



部下達が、ランチを食べに行く。


隣で聖奈はもじもじしていた。


先程の件もあって俺に声をかけにくいのか、自分から何も言って来ない。



「いいよ、休憩とって」



俺がそう言うと、安堵のため息をもらした。



「お先に休憩いただきます」



聖奈はカバンから弁当袋を取り出すと、部屋から出ようとする。



「トイレで食べる気じゃないだろうな? 昔みたいに」



聖奈は中学時代、トイレで弁当を食べていた。


理由はわからないが、彼女は友達がいないように見えた。


なんだか放っておけなくて、俺はその女子トイレの前で弁当を食べた。




「い、いえ! 朝早めに来て、社内を回ったので...休憩室がどこにあるのかはわかります」



聖也と待ち合わせしてるわけでもないということか。



「休憩室は混むからここで食え」


「えっ...」



聖奈はきょろきょろと辺りを見回す。


他には誰もいない。



「い、いやです」



何故?



「お前、誰もいないからって俺が何かするとでも思ってるのか? おこがましい。AVの見過ぎだぞ」


「は、はあ?!」


「いいから席に戻れ。お前に頼みたいことがある」



しぶしぶといった感じで聖奈は席に戻る。



「電話かけて。03-××××-××××」


「は、はい!」


「もやしラーメン定食一つ」


「えっ?」


「ラーメン屋の電話番号。もやしラーメン定食頼んで」



不承不承電話をかける聖奈。


それが終わったら、自販機へお茶を買いに行かせよう。

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