11 「イケメンの友達」


「聖也の女じゃないなら、好きなもの一杯どうぞ。ご馳走します」


「いいんですか? じゃあ、お言葉に甘えちゃお」



マリアは帝翔の奢りでミスティアのジンジャー割りを注文した。


俺は俺でアードベッグのロックとチェイサーを頼む。


昔はスモーキーな香りのウイスキーが苦手だったが、今ではこの匂いがクセになって、アイラ系ウイスキーが好きになってしまった。




「あの、もし私の勘違いだったらごめんなさい。帝翔さん、今日武蔵小杉のショッピングモールにいました?」



マリアが帝翔に聞く。


俺は嫌な感じがした。


帝翔はムサコに住んでいるのだから、ムサコのショッピングモールで見かけてもおかしくない。


ショッピングモールは駅前だし、あいつの家も駅から近かったはず。


帝翔は自炊する方だから、帰る前に買い物したのかも。


でも、それって、つまり、マリアが言っていたイケメンって...帝翔のことか?


マリアは「同じ高校にいた人に似ている」と言っていた。


何故俺は、そのイケメンがマリアと同学年だと思い込んだのだろう。


マリアが1年の時、帝翔は生徒会長だ。


集会や行事ごとで、生徒会長は皆の前に出ていたのだから、1年生が帝翔を知らないわけがない。



「は、はい」


「ああ、やっぱり! 似てると思いました! 駐車券の処理したの私です」


「...よく俺だって覚えてましたね」


「覚えてますよ! 帝翔さんみたいなイケメン、なかなかいないですから」



胸がずきんと痛む。


昔から帝翔はイケメンで人気があったから、「聖也くんの友達かっこいいよね」って言われるのは慣れっこだが...マリアまでそう言うなんて。


なんだか、ショックだ。



「俺もマリアさんのこと覚えてますよ。同じ高校の中で一番美人でしたから」



ちょっと待て!


秘書課の美女軍団に目もくれない帝翔が、女を褒めるなんて!


帝翔の口から「美人」という言葉が出るのは、キャメロン・ディアス以外聞いたことないぞ?!

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