4 「妹の親友」

帝翔との昼食はだいたいカレーかラーメン。


俺がカレー好きで、帝翔がラーメン好きだ。


カレーを食べるかラーメンを食べるか、ほぼ毎日この話し合いをする。


今日は帝翔に笑わせてもらったから、あいつに店を選ばせた。


日比谷駅の近くにあるラーメン屋。


今週三度目だ。



「またここかよ。まあでも今日は童貞くんが面白かったから良しとしよう」



俺はまだコンビニの件で笑っていた。


帝翔はさすがに不機嫌になったようだ。


もやしラーメン定食を頼んだきり、俺の言葉はフル無視で、ずっとスマホをいじっている。


本当にわかりやすい。


こいつの機嫌を直す為の言葉を考えなくては。


その時、俺のスマホの通知音が鳴った。


マリアからのラインだった。



『観たい映画があるんだけど、一緒に観に行かない?』



聖(ひじり)マリアは妹の親友だ。


高2でクラスが一緒になった二人は、共通の趣味で意気投合した。


乙女ゲーム? とかいう、いわゆるイケメンと恋愛するゲームで、同じ作品をプレイしていたのがきっかけで仲良くなったらしい。


妹の聖奈いわく「推しかぶりしなかったから仲良くなれた」んだと。


「私達同担拒否だから」と言われた。


同じキャラが好きな人とは仲良くなれない、という意味らしい。


意味がわからん。


100歩譲って相手が人間ならまだしも、ゲームのキャラクターだぞ。


そんな感じで二人は仲良くなった。


妹を通じてマリアと出会った俺は、何故か彼女に懐かれた。



『良いよ。何観たいの?』



俺が返事を返すと、すぐに既読がついた。


マリアから送られてきた作品名を検索する。


彼女が好きな俳優が出演している、ミステリー系の映画だった。



『渋谷18時の回なら、今日行けるけどどうする?』



そう送ると、彼女は『じゃあ今日!』と返してきた。

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