17 「ハデスのように」


「あの、もし私の勘違いだったらごめんなさい。帝翔さん、今日武蔵小杉のショッピングモールにいました?」



俺はドキッとした。


ストーカーしてることバレていたらどうしよう。



「は、はい」


「ああ、やっぱり! 似てると思いました! 駐車券の処理したの私です」


「...よく俺だって覚えてましたね」


「覚えてますよ! 帝翔さんみたいなイケメン、なかなかいないですから」



俺は思わずにやけてしまった。


マリアにもイケメンだと認められて嬉しい。



「俺もマリアさんのこと覚えてますよ。同じ高校の中で一番美人でしたから」



我ながら大胆なことを言った。


恥ずかしくて誰とも目を合わせられない。



「高校時代に二人は知り合ってたのか?」



聖也の疑問にマリアが答える。



「私は知ってたわ。生徒会長の明堂先輩...ですよね? 私が高1の時の生徒会長。イケメンすぎる生徒会長って、私の学年でも人気だったんだから」



そうだ、俺は人気者だ。


毎週誰かに告白されていた。


女教師にも口説かれたことがある。


そんな薔薇色の高校生活でも、童貞を守り通した自分を褒めて欲しい。


これがギリシア神話のゼウス並みの性欲を持つ聖也だったら、片っ端から女を抱いていただろう。


俺はハデスのように、ペルセポネだけ抱ければいい。



「でも帝翔さんは何故私を? 一回、裏庭に呼び出されたことがあるんですけど、覚えてますか?」



忘れるわけがない。


あの失態を今でも悔やんでいるのだ。


しかし、マリアも覚えていたとは。


嬉しい気持ちが半分。


忘れて欲しかったが半分。

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