2 「彼女を作れない理由」


俺に相応しいと思った美女は、過去に一人だけいた。


高校三年生の春。


俺は初めて女性に告白しようとした。


相手は一年生の聖(ひじり)マリア。


高校生で髪をだいぶ明るく染めていて、バチバチに化粧をしている女の子。


カラコンをしていない日は見たことがない。


はっきり言ってギャルだ。


顔が幼いキャバ嬢といった感じ。


その無理して大人っぽく見せているところが俺の心に刺さった。


放課後、校舎裏に呼び出した。


学年も違えば、委員会も部活もかぶっていない。



「えっと...生徒会長...ですよね?」



彼女の代の入学式に、生徒会代表で皆の前に立ったことがあり、マリアは俺を知っていた。



「私、何かしました?」



勉学を疎かにしなければ、髪色は自由という緩めの校則だった母校。


とはいえ成績上位でもないマリアが、何故生徒会長に呼ばれたのか。


理由がわからず困っている彼女。


俺の顔は知られているが、改めてちゃんと自己紹介しよう。


名前を名乗ってメアド(当時ラインはまだ存在していなかった)を渡そう。


そう思って俺は口を開いた。


普段全く緊張しない俺だが、この時は心臓が口から出てきそうなくらい高鳴っていて、胃も痛くてその場にしゃがみたかった。



「あ、あの...俺...みょう...どうてい...と...です」



頭も真っ白になっていて、自分の名前の「どうてい」

の部分が変に強調される言い方をしてしまった。



「あっ、童貞じゃなくて! いや、童貞ですけど! あ、いや、違くて!」



自分でも何を言っているのかわからない。


俺は恥ずかしさで死にたくなった。


そしてその場から走って逃げ出してしまった。


呼び出した彼女を置き去りにして。


それ以来一度も彼女に話しかけることが出来ず。


未練だけが残り、二十八になっても未だにマリアのことが忘れられないでいる。

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