67日目「初心に帰りたかった」
もう一度だけ、頑張ってみようと思ったんだ。
色々あって、荒れたこともあった。
それでも、もう一度だけ、やってみようと思ったんだ。
初心に帰りたかったんだよ。
もう一度だけ。
あの子に見せたら。
そしてまた「才能がある」って言ってくれたら。
なんとか立ち上がれるかもしれない。
そう思って。
書いたんだ。
あのDIABLEと、同じだけの熱意を込めて。
今日の学校でわたしは文章を見せた。
他の友達と一緒にいて、ちょっと恥ずかしいのもあったけど、そんなのよりもよっぽど重要だったから。
「どうかな? 結構自信があるんだけど」
彼女は「あはは・・・」とだけ言った。
「ねえ、面白いところ、あるでしょ?」
苦笑いのままだ。なんで?
「わたし、才能あるよね?」
そう言ってくれたもんね?
「うーん、あんまり本読まないから、わかんないかなー」
それから先のことはよく覚えてない。
家に帰ってタイプをした。
「ころに」と打とうとしたら、タイプミスで「ころし」と打ってしまった。
ころし
ころし
ころし
ころし
ころしたい
ころしたいころしたいころしたいころしたいころしたいころしたいころしたいころしたいころしたい
おさえきれない。
親はたまたま両方ともいない。
なら、いいよね?
それからは全力で叫び、キーボードに握りこぶしを叩き込み、回転椅子を壁に投げつけた。
ほんとはモニタも持ちあげてぶん投げようとしたけど、さすがに抑えた。
やれるだけやって、私は思った。
タイプミス?
タイプミスだって?
そんなわけないじゃんか。
NとS、どんだけ距離あると思ってんのよ。
Мになるならまだしも。
NとSを打ち間違えるわけがないじゃん。
ああ、わたしは。
わざと打ったんだ。
はっきりとした意志で。
あいつをころしたくて。
たまらなくて。
涙がこぼれた。
初心に帰りたかった。
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