エピソード3, 私達は半人前の騎士(続きが書けなくて埋もれた作品)
王国騎士団には近衛騎士団と魔法騎士団の二つが存在する。
長い歴史の間この二つの騎士団は互いをライバル視しており、仲が悪いことはどこから見ても明白であった。
そして私は魔法騎士団に所属する魔術師である。
父は元魔法騎士団長、母は精霊国の令嬢という間に生まれた私が魔法に恵まれるということなどきっと必然的だったのだろう。
それ程までに私は魔法に恵まれた天才と呼ばれていた。
一生を魔法に捧げる覚悟などとっくにできていた。
それなのに……。
( なんでこんな顔の良い人と婚約しなくてはいけないのですかぁぁぁぁっ!?!? )
心のなかでは叫び声をこれでもかとあげ、済まし顔で目の前の相手と向き合ってはいるものの、表情筋はひくついていた。
事の発端は私の上司のせいだ。
ライバル関係にある近衛騎士団の内情を探る用に命令を下されたのだ。
実質スパイである。
そして、騎士団内の人間と(一年契約の)婚約を結んでこいと言われた。
それならまだいい、これは仕事なのだから。
問題は相手のことだ。
その婚約相手に向け仕事上、情を湧かせてはいけない。
正直そんなもの湧くなんて事ないと思っていた。今まで人を好きになったことなんて無かったのだから。
しかし、そんな事無かった。
目を奪われ、心までも奪われそうだった。
「貴方が今回の婚約相手ですか?」
目の前の青年は冷ややかな瞳でこちらを見つめる。射抜くような視線を向けられ、心臓は早鐘を打つように脈を打ち続けていた。
たとえその瞳が敵対関係にある私を警戒し、嫌っているのだと語っていたとしても美しいと感じてしまった。
所謂、世間でいう【一目惚れ】というものであった。
◇◆◇
目の前の令嬢はライバル関係にある魔法騎士団の団員。そして、俺の元に送られてきたスパイだ。
(……。)
(はぁぁ……めちゃくちゃ可愛いんだが)
一旦頭を冷やそうともう一度向かいへと座る令嬢の方に目を向ける。
艷やかな黒髪に海の宝石の様な空色の瞳を持った美しい女性。柔らかそうな乳白色の肌はフリルの付いたドレスに身を包まれており、その衣装は彼女の女性らしい魅力を盛大に引き出していた。
小鳥の囀りのような華麗な声が口元から奏でられる度に一喜一憂し、今までに感じたことのない幸福感が心を満たす。
うん、結婚しよう。
婚約する前からそんなとんでもないことを考えてしまうほど俺はこの令嬢に強く惹かれていた。
(いや、何を考えているんだ俺!もしかしたら彼女の魔法の力かもしれないんだぞ!)
は…っと我に返って内心焦りを鎮めるために溜まった息を吐く。
(駄目だ、彼女のことを考えるな。……可愛いなぁって、まてまて……っ)
何度も何度もそんな事を繰り返し、本心に背く。
こちらも、世間一般的にいう【一目惚れ】というものであった。
((この人のことを好きになってはいけない……っ))
――両片思い(?)の物語が幕を上げた。
さてさて二人の恋の行方はどうなるのでしょうか?
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