第22話 初ダンス!

「ブランシュ! 久しぶり!」

「ロラ姉様! モニカ姉様! 待っていました!」

「あぁ、やっぱりこのドレスをデザインして良かったわ。可愛いブランシュが少し大人の雰囲気を出す感じが出ていてとても合っているもの」


ロラ姉様がそう言うと、家族も頷く。


「お久しぶりです伯父様」

「やぁ、ブランシュ。久しぶり。君が舞踏会に出るなんてよくロザーリエが許したね」

「えぇ。兄様やロラ姉様とモニカ姉様と一緒ならいいと言われたのです」

「そうかそうか。滅多に舞踏会に出ないんだし、楽しんでおいで」

「もちろんですわ!」


姉様達と学院の話をしていると、貴族達の挨拶が全て終わったようで陛下から舞踏会の開始の挨拶が行われた。


「ブランシュ、父と踊ろう!」

「はい! お父様!」


 父とホールの端の方で踊ろうとするけれど、何故か人がモーセの海のように人々がザザッと左右に避けている。


中央へ行けといわれているようだ。


「……仕方がないな」


父は苦笑しながら私の手を取り、中央に向かった。

お互い礼をし、父と踊り始める。


「ブランシュと踊るという夢が叶った。嬉しいよ」

「お父様、私も舞踏会で踊れるなんて夢のまた夢だと思っていました。嬉しいです」


このためだけに一生懸命ダンスを覚えたと言っても過言ではないの!


エディットを練習台にして頑張ったの!

夢の舞踏会。踊ることが出来たわ!

生涯の思い出になった!


 父は私と踊っていることに感動して今にも泣きそうだわ。曲の最後にクルリとターンをしてお互い礼をする。


「ブランシュ、僕と踊るだろう?」

「えぇ! 兄様!」


私は兄にすぐ手を引かれた。父は母と一緒に隣で踊るようだ。


「兄様、楽しい! もっと踊りたくなっちゃう」

「他の令息達と踊るかい?」

「ううん。兄様とだけ踊っていたい」

「そうだね。僕もブランシュともっと踊りたいけれど、それだと病弱ではないとバレてしまうよ?」

「……そうね。でもこうしてお父様とお兄様と踊れただけで充分満足かな」

「嬉しい事を言ってくれる。さぁ、そろそろ曲も終わりだ。父上の所へ戻ろう」

「はい、お兄様」


キラキラした舞踏会で初めてのダンス。夢見心地の私は兄にエスコートされながら父達と壁際に移動する。


「ブランシュ、とても素敵だったわ。私が男なら絶対にブランシュと踊り続けていたわ」

「ロラ姉様、私、頑張りました!」


姉様達とキャアキャアと話をしていると、母が私達に言った。


「ブランシュ、私達は他の方に挨拶をしてくるわ。ヴェルナーの側から離れちゃだめよ?」


私は頷くと、父達は微笑みながら挨拶周りに向かった。


「ね、ねぇさまっ。なんだか皆がこちらを見ている気がするわ」

「そうね。でも気づかない振りをするのも淑女なのよ?」

「そうなの? 難しいわっ」

「ブランシュ、あっちに軽食が置いてあるから食べに行こう?」

「本当? 王宮の食べ物って食べたことがないから食べてみたいわ。兄様、行きましょう?」


私達が移動しようとした時、五名の子息が声を掛けてきた。


「君が有名なブランシュ・マルリアーニ侯爵令嬢かい?」


誰だろう?


みんな年上のような感じだ。そんなに気軽に声を掛けてくるほどの爵位なのか??


 疑問に思いながら口を開かずにいると、ロラ姉様が代わりに口を開いた。


「どちら様ですか? 名も名乗らないとは失礼ではないですか?」

「おーこわっ。ビルンド伯爵令嬢。俺達はそっちの令嬢に話し掛けているんだよ」

「あぁ、こんなマナーも知らない奴等は無視でいいよ。さぁ、行こう」


兄様達は子息達を避けて歩こうとするが彼らは私達の行く手をニヤニヤしながら邪魔するようだ。


「冷たいねぇ。俺らの事を知らないわけじゃないだろう?」

「はぁ、この場で目立ちたくないだけですよ? 先輩方」


どうやら学院の上級生のようだ。爵位も上なのかな? 私はジッと彼らを観察する。私達の様子に気づいた人達がザワザワしはじめる。


「ブランシュちゃん、あっちで話をしよう? 君が舞踏会に出てくるのをずっと待っていたんだ」


手を伸ばそうとしてくる一人の子息。すると、横から声がかかった。


「舞踏会の場を荒らすことは見過ごせません。どうかこの場をお引きください」


 そう言いながら出てきたのは王宮騎士団団長のノルヴァン様だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る