第6話 美人な従姉妹
……みんなに見られている。
緊張して手汗が酷いことになりそう。
おんも怖い!
私達が着席すると同時にメイビリット王妃殿下とカインゼル殿下の入場となった。弟のウェイン殿下はまだ幼いので今回のお茶会には参加していない。せっかく席に着いたけれど、挨拶をしに行かないといけないわよね。
「兄様、挨拶に行くの?」
「大丈夫だよブランシュ。僕と行こう」
私達は侯爵家なのでこの国にある三大公爵の子息や令嬢の後に並ぶ。公爵方の後ろに並ぶと皆が後ろを振り返ってガン見してくるよ……。
ヒェェェェェ、怖いっ。ガクブル。
私は兄の手を力いっぱい握りしめて挨拶の順番を待つ。公爵方の挨拶が終わり、私達の番となった。目の前にいるメイビリット王妃もカインゼル殿下は流石王族という感じで途轍もなく見目麗しいわ。写真があれば是非ブロマイドとして欲しいくらいだわ。
そんな人達が私と兄を凝視している事に気づいた。
な、何か変?
私の頭に虫が止まっている?
口に朝のマーマレードが付いているとか??
目が泳ぎそうになるのをぐっと我慢したのは母からの淑女教育の賜物だと思う。
「メイビリット王妃殿下、カインゼル殿下。本日はお招きいただき有難うございます。妹の体調が優れない中、なんとか登城する事ができました」
兄よ、ストレートに言い過ぎではないかしら。私は内心ドキドキしているわ。
「ヴェルナー・マルリアーニ、ブランシュ・マルリアーニよく来てくれましたね。首を長くして待っていました。ブランシュ嬢、体調が優れない中、無理させてごめんなさいね。どうしてもカインゼルが会いたいと言っていたの」
キャピキャピと音が聞こえてきそうな程テンションの高い王妃。
無理やり呼び出しておいてそれか。顔が見たいだけなら邸にくればいいじゃない。王命まで使って呼び出すなんて最悪だわ。どうせ物見高い感じで呼びつけただけだと思うの。それとも珍獣お披露目会なのかしら。
私は怒りで震えるけれど、カインゼル殿下は勘違いしたようだ。
「母上、ブランシュ嬢の体調は本当に悪そうです」
「あら、そうなの? 無理はしないで頂戴」
「後ろも控えておりますゆえ、失礼致します」
私は兄と礼をして席に戻った。
「お兄様、挨拶はなんとか終わりました。……もう帰りたい」
もう主要なイベントはこなせたと思うのよ。人の多さにもげんなりするし、視線も怖いし帰りたい。
「そうだね。もう帰りたいよね。でもさ、残念ながらお茶会はまだ始まっていない。始まって少し経ったら帰ろうね」
「……分かりました。頑張ります」
私は自分を落ち着かせるように無の表情になる。心の中で早く帰りたい、早く帰りたい、早く帰らせろと念仏のように唱えたのだけれどね。
暫くすると挨拶も終わり、お茶会が開始となった。
お茶会は丸テーブルに四人程が座るような形を取っている。
席には同じ派閥や爵位が同じなど色々と考慮された席になっているみたい。私の右横にはもちろんお兄様が座っている。そして残りの二席には私の従妹のロラとモニカが座っている。
彼女達はビルンド伯爵令嬢として参加しているの。やはり従妹なだけあって私達兄弟とどことなく似ているし、美人姉妹なのよね。
ロラ姉様は私の三つ上、モニカ姉様は一つ上なの。とても優しくて大好きなのだけれど、我が家の事情で邸になかなか来られないのが残念なところ。
「ブランシュ、貴女、よく来れたわね」
「えぇ、ロラ姉様。陛下からの召喚状で無理やり」
私はガクブルしながら答える。
「ヴェルナー、もうお茶会が始まるわ。一斉に令息が向かってくるから気を付けるのよ?」
「勿論ですよモニカ」
従妹がそう言っている間に王妃様からお茶会の始まりの挨拶が終わったわ。
皆が一斉に席を立ち始める。
やはり令嬢はカインゼル殿下の方へ向かうようだ。令息達は一斉にこちらに向かってくる。
「ね、ねぇさまっ」
私は慌ててロラ姉様に抱きついた。
「大丈夫よ? ブランシュ」
「ロラ姉様、役得ね」
モニカ姉様が私もと言って手を出しているけれど、私にそんな余裕はない。いつもなら兄に抱きつくのだけれど、ここは他の貴族も沢山いるお茶会。
さすがに異性である兄に抱きつくのは不味いと躊躇してしまったわ。私なりにね。そしてロラ姉様とモニカ姉様なら安心なの。これも私のせいなのだけれど。
どうやら幼い頃に私と会った姉様達は私を狙う貴族達から守ってやりたいと仰ったようで貴族令嬢ながらも暗器を使いこなし、体術も身につけている。
姉様達も美人だから自分の身を守るためにもちょうどいいって言っているけれど、何だか申し訳ないわ。
私も護身術を習いたい。体力も全くないし。筋肉があると身体の均整が取れて綺麗よね。
命を狙われるほど綺麗じゃなくていいの。でも、どうせならムキムキマッチョになりたいわ!そうだ、先ほどいた誰だっけ、ノルヴァン様なら教えてくれるかもしれない。
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