044-新メンバー

次の日。

私は届いたコンテナを開封していた。

モノがモノなだけに、正しい手順で開けないと中身が焼き払われる特殊仕様だ。


「開いたっ!」


そして、中にあったのは...データディスクであった。

これこそが、シトリンの戦闘用インターフェースである。

結構高めだったけど、臨時収入でなんとか賄えた。


「ここにセットすれば良いのかな」


シトリンを停止状態にして寝かせて、近くの機械からコードを伸ばして繋げる。

そして、データディスクを機械に入れた。

暫くすると、シトリンの顔に製造社のロゴが出て、直後に目と口が表示された。


『個体名、シトリン。正常起動しました』

「うん、よし」


私はシトリンにつながっているコードを外す。

データディスクの中身を確認すると、空になっていた。

正確には、販売者とインストール年月を示すファイルが一個だけ残っていたが。


「戦闘インターフェースはどう?」

『特に問題なく使用可能です、マスター』

「それは良かった」


シトリンがいれば、ドローンの操作などが格段に楽になる。

まだ幼いケインに任せる必要はなくなるわけだ。

となると、何をやらせようかな...


「よし、じゃあブリッジに上がろう」

『分かりました』


私とシトリンは一緒にブリッジに上がる。

そこでは、ファイスとノルスが作業していた。


「ファイス、ノルス、新しい仲間だよ」

「よろしく」

「よろしくお願い申し上げる」

『よろしくお願いします』


シトリンは会釈すると、立ち止まった。

どこに座るか迷っている様子だ。

私はシトリンを、レーダー席に座らせた。


「当分はレーダーとスキャン、電子戦を中心にやってもらうよ」

『わかりました』


人材育成の事と、かなり盛ったとはいえシトリンの基本スペックを考えると、あまり大量のタスクを抱え込ませるのも良く無い。

お兄ちゃんも、「有能だからと言ってなんでも任せてると、そのうちそいつがいなくなった時に困る」って言ってたからね。


「この船の武装は特殊だから、戦闘指揮がダメそうならそのままの席でいいよ」

『必ずご期待にお応えいたします』


頼もしい。

ただし、シトリンは思考制限が掛かっているので、飛躍した思考の発展はできない。

よってこの船の技術レベルが圧倒的に高い武装の仕様を完全に理解できるかは、お兄ちゃんはともかく私にはわからない。


『スキャンを開始します』

「...おお」

『レーダー起動、索敵開始...周辺に敵影なし』

「ふむふむ」

『ハッキング開始します...開錠に成功』

「成程」


スキャンをすれば、かなりの高精度で周囲の船の情報が現れ、レーダーを起動すると、室内なのでよくわからないものの、動くモノがないため敵影なしとわかる。

ハッキングを行えば、私が持っていたカーゴコンテナが開く。

これ、高難度ミッションの報酬なんだけど...ちょっと性能盛りすぎちゃったかな?


「...とはいえ、今日から君はこのアドアステラの乗組員だ」

『イエス、マスター』


こうして、旧デザイン機体に色々盛り込んだシトリンが、アドアステラのレーダー長として加わったのであった。

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