150-神話の箱舟
「なあ、アレ、どうなった?」
『ああ、アレ...ですか、オーバーホールがもうすぐ終わりますよ』
柄にもなく身体を張った俺は、Noa-Tunの士官食堂でオムライスを食べていた。
疲れ果てたが、まだ戦いは続く。
ルルとネムという最大の弱みを奪い返した以上、次に取る手は反撃のみ。
そのための一手として、俺はオーロラにあることを命じたのだが...
『無茶するのう、主力艦を解体してしまうとは』
「だが、必要だった」
資源が足りないから、ツギハギだらけだがな。
燃料も無理やり移し替えてある。
既に燃料チャンバーにあるやつを戻すのは骨が折れたが、代わりに『アレ』を動かす為の燃料を確保できたので、全く問題ない。
「ふふふ...絶対的優位を覆されるのは、どんな気分だ?」
俺は虚空に向かってほくそ笑む。
自分たちの持つ技術を、相手が持っていないと決めつけるのは早計だということを、あのエミドとかいう邪魔者は知るべきだろう。
俺はオムライスを掻き込み、皿を下げてドックへ向かう。
ドックにあった適当なシャトルに乗り込むと、オーロラが自動操縦で目的地である艦船係留フレームのある場所まで誘導してくれる。
「デカいな.......」
『仮にも、
俺の眼前に鎮座しているのは、ミドガルズ・オルムに次ぐ新たな
「ムスペルが所有するという、死者の爪で出来た船。その船が出港するとき、それ即ち
ちなみに、小惑星級旗艦級戦艦の上位....つまり惑星級にもなると、ようやくラグナロクという名前の主力艦が登場する。
あれは.......まぁ、その何が凶悪かというのは、一見すればわかるだろう。
『ナグルファー級、主武装は80㎝プロジェクタイル弾タレット60基、近距離トルピード発射管300基、ジャンプドライブ、及び改良型遮蔽装置を搭載しています』
ふざけた事に、このナグルファーは遮蔽して存在を隠す事が出来る。
そして、P.O.Dをぶつけようと群がるであろうエミド艦に対する対策も充分だ。
「それにしても、不気味な外装だな.....」
『本来別々の艦船のパーツを分解し、加工しているので.....』
まるで、子供が適当に組んだ積み木に、ぐちゃぐちゃに色を塗ったようなデザインである。
威圧感は十分だな。
「ミドガルズ・オルムは燃料の問題を抱えていたが、こっちはどうだ?」
『大戦艦用のパワーコアを大量に搭載することで、ジャンプドライブの膨大なエネルギーの一部を賄う事に成功しました。通常航行時は、超高出力のアフターバーナーの起動にパワーコアのエネルギーを転用しており、フリゲートの通常航行速度程度で飛翔することが可能です』
「冗談だろ」
デカくて速い。
おまけに、燃料問題も解決ときたか。
ツギハギ艦だからできる芸当だ。
「だが、やはり防御面に不安は残るな」
『本来はシールド防御艦ですが、アーマー防御艦に置換しています。そのため、重力下で自重で崩落するため、惑星に降下することはできません』
「だろうな」
まあ、惑星に降りることはないだろう。
今回はこれを旗艦とし、逆侵攻をかける予定だ。
そして何より、こいつには最大の装置が積まれている。
「”アレ”はどうなった?」
『搭載しております。ただし、ジャンプドライブの出力を転用するため燃料を相応に消費しますが......』
「数回使えれば十分だ」
敵の本拠地を穿ち、こちらを脅威と認識させるため。
ナグルファーの特殊装備が重要となる。
「PARADISE-GUARDIANの生産状況は?」
「予定水準の82%を既に完了しています」
「よし」
次の戦いでは、ネム・ルル奪還戦で使った艦船は一切使用しない。
敵に情報を渡さず、更に上位の艦船で勝負するのだ。
次も。また次も。
ネタを切らさずに敵に驚きを与えてやる。
対策などと、小賢しい真似はさせない。
無茶苦茶だが、楽しんで行こう。
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