085-シエラ星系制圧戦-開幕
「それでは、これより作戦概要を説明する」
俺はそう宣言した。
戦闘指揮所にいる面子は、アインス、ツヴァイ、ルル、ネムの四人だ。
つまりは、ほぼ全員ということだな。
「我々は、後続で突入する。オーロラ、先行突入の第一、第二、第三分隊の指揮を頼む」
『了解しました』
すでに当星系にはアンドラスが潜入しており、いつでもジャンプピンガーを展開可能だ。
ピンガーの展開と同時に、第一~第三分隊が突入する。
これらは、
第一:ブラインドファイス、フェイルノート、アコライト、ウェーブライナー、インプ、ダブルエッジ
第二:フェイルノート、ダブルエッジ、ツインフェイト、シンフォニア、レイピア
第三:ハイドシーカー、シージレギオン、アカツキⅢ、プロトスカウター、アルファスカウター
に分けられる。
要は、先行で突入して手早く敵艦隊を制圧する艦隊構成だ。
「ルルとネム、アインスは、第四、第五分隊の指揮を執れ。ネムは事前の勉強を生かすんだ...できるな?」
「はいっ!」
「ツヴァイは今のところ任せるものはないが、必要に応じて役割を割り振る」
「はっ、お任せください」
第四分隊はモルドレッド、イシュタル、スレイプニル、ナイトプライド、フォールンダウンの陣地防衛艦隊で、
第五分隊はアグリジェント、シンフォニア、シンビオシス、ガレスと、新造艦の大型艦載機母艦を含む艦載機とその支援艦隊だ。
「では....これより、作戦を開始する」
俺は全員に背を向け、司令官の席に座る。
この席は神の座でも、魔王の座でもない。
....少なくとも、俺はそう思っている。
暗闇。
果ての無い暗闇、惑星の陰になるようなその場所で、一隻の艦がその姿を露にする。
直後、その艦は変調された信号を発する。
その信号は、全宇宙に到達するほど強力ではあるものの――――その変動性から、人為的なものとは誰にも理解されないだろう。
直後、強力な次元変動が発生する。
ジャンプピンガーの信号を追って、主力艦アヴェンジャーがポータルを展開したのだ。
大質量の相互疑似ワームホールが出現し、そこにまず、第一、第二、第三分隊が出現する。
『敵に気づかれる前に行動しろ。探査プローブ展開、スターゲートの位置は抑えてあるから、そこにプロットツイストを送り込めば、ナージャが経由回線でゲートを停止する』
『分かりました』
『理解。既に回線は接続、多少のノイズ、作戦に支障無』
通信が終わると同時に、第一、第二分隊が動き出す。
第三分隊は、まったく別の方向へ。
遮蔽装置でいったん隠れ、ここぞというタイミングで動くために第三分隊は存在しているからだ。
『こちら、シエラ中央管制室! 大規模フリートの襲来を確認!』
そしてすぐに、シエラの出口ゲートの襲撃が中央管制室へと伝わる。
クロワ星系へのゲートに、範囲型インターディクションが展開され、フリゲート艦隊はMSDを起動してゲートの周囲を旋回する。
『艦隊、ゲート前に到着――――な、なんだこれは!? ワープできん!』
『第一分隊、攻撃開始! プライマリを設定する、タグA、B、Cから射撃開始。各自最適射程距離を計算しつつ接近せよ、タグXは旗艦であるので、最適射程距離に入り次第集中攻撃しろ』
『了解、ナージャはゲートへのアクセスを開始せよ』
『既に実行。進行率、表示』
Noa-Tun側のモニターに、[進行率:2%]の文字が表示される。
『私が解析速度をサポートしていますので、今回は半分の時間.....1時間、もしくは30分でゲートを掌握できます!』
『了解。第三分隊は、現在ワープ中の現地艦隊を叩く。偏差撃ちの要領で行くぞ、旋回開始!』
範囲型インターディクションは、その内部に進入する軌道のワープをその円形の表面付近で停止させる効果を持っている。
だからこそ――――
『なんだあれは!? くっ、吸い込まれる――――』
ゲートを目指して愚かにも一直線に飛んできた艦隊は、一定の場所に
その場所は――――第三分隊の進路上である。
『第三分隊、事前装填の榴弾ボムを発射!』
『発射!』
固まったせいで身動きの取れない艦隊は、一斉射されたボムを迎撃することしかできない。
だが、
『させるかよ』
第一分隊のブラインドファイスから、ECMバーストによる妨害が入る。
広範囲に電磁パルス妨害を行い、電子機器をダウンさせる兵器である。
「なんだこれは!! 何が起きているッ!?」
「通信機器....いえ、システムダウン! 強力な電磁パルスによる妨害です!」
「対電磁防御は!?」
「無効化されました! 出力が違いすぎます!」
艦橋にて、艦長は悟る。
中規模だからといって、ゲートを通らずに出現した相手を――――見くびるべきではなかったと。
そして、ゲート前で起こった爆発が、シエラ星系の暗い星空を明るく照らし出したのだった。
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