067-ちょっと重い愛
BDCの係留は無事に終わり、後は固形燃料ブロックを搬入して起動するだけだ。
輸送艦ワンダラーを呼び込み、燃料を搬入して蓋をする。
『BDCオンライン』
同時に、周囲のタレットに送電が開始され、起動する。
『フォースフィールドを展開します。周辺の艦船は一定の距離を取ってください』
全ての船が離れた所でフォースフィールドが展開され、BDCが完全に隔離された。
『把握。これが自分の襲撃した拠点。強固なシールド、高火力自動砲台。あの戦力では不足』
「そうか? 戦闘を継続すれば、セントリーガンくらいは壊せたと思うぞ」
起動したフォースフィールドを見て、ナージャが目を見開いて驚いている。
まあ、あれを壊してもホールドスターと同じくリーンフォースモードに入るけどな。
『では、建造物を射出します』
モジュール区画に分かれた採取施設が順番に射出され、フォースフィールドの中で組み立てが行われる。
これも、BDCからエネルギー供給を受けて稼働する。
最後に、燃料貯蔵用のサイロを設置して終わりだ。
「ガスの採取はいいが、何に使うんだ?」
『以前も説明しましたが、皇女を実験台にしてドリップの実験を行いました。獣人の身体構造に不安があったため、採取したDNAをもとにシミュレーション実験を多重的に行いましたが、点滴やインプラントによる不具合は確認できませんでした』
血流を加速させて身体能力を一時的に引き上げる瞬間活性などの特徴については、まだ未確認だが、獣人の人体構造はほぼ一般的な人類と変化がないようだ。
これらの事から、インプラントやドリップがあれば、獣人兵たちの性能向上に役に立つとオーロラは言った。
『ただし、拒絶反応や成長による排出や異常を防ぐため、成人した個体にのみ使用します』
「ああ」
皇女の例を見る限り、インプラントの取り出しは出来る様だ。
だが、点滴の類は未知の変異を生む可能性がある。
出来てもやらないが、ネムとルルの二人にインプラントや点滴を行うのはまだ控えた方がいいだろう。
『この螺旋構造物の役割はエネルギー粒子の循環。記録?』
「ああ、した」
『申し訳、ない。コミュニケーション機能が不完全。アップデートを重ねる』
「俺は別に構わないが」
基地の設置が終われば、引き続き技術解析を行う。
シールドキャンセラーの内部構造が、ナージャによって明らかになっていく。
『司令官、彼女が何を伝えたいのかわかるのですか?』
「ああ、何となくな」
『私にはわかりません....』
もしかして伝わってなかったのか?
とは思ったが、単語は拾っていても、命令形の表現が独特すぎて伝わっていなかったらしい。
『興味深い。数千年間のコミュニケーション不足、新たな可能性の発展』
「そうか」
こいつも結構寂しかったようだ。
演算能力が高かったばかりに、対話する相手がいない状況に閉塞感があったようだ。
「それなら、俺だけじゃなくオーロラやネム、ルルとも話してみるといい。話を分かってもらうだけではなく、理解してもらえるように話してみると、世界はもっと面白いかもしれないな」
『面白い...世界....新たな知見、感謝』
ナージャは一瞬( ゚д゚)といった顔になった後、無表情に戻ってそう返してきた。
何か変な事でも言ったか?
そして、17時から二人と遊ぶことになったのだが....
「これは何だ?」
「その.....私とネムで作ったんです」
ルルが差し出してきたのは、制帽を被ったSDキャラサイズの俺の人形であった。
俺はそれをそっと受け取る。
「精巧だな」
「はい! オーロラ様に協力していただいて...」
「成程」
オーロラなら俺を常に見ている。
ホログラムを見ながら作ったんだろう。
「ありがとう、戦闘指揮所が賑やかになるな」
「あの....それから....」
ルルはすぐ傍にあった箱を開けた。
すると、箱の中にあったのは....
「一個じゃ満足できなくて、一杯作ってしまいました! ごめんなさい!」
大量の俺の人形だった。
どうしようか、思ったより重いぞ、この贈り物は.....
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます