027-並行作戦

そして、二日後。

敵はこちらの読み通り、数度の襲撃に何の疑いもなく援軍を送り出した。

コレで俺は、二つの作戦を同時展開できる。

まず一つは、別の基地へのハラス行為。

次に、カウエッガ採掘拠点への補給線の寸断。


「敵艦隊を分断しろ! レイピア級を前に出せ!」

『敵艦、左右翼に分かれ包囲陣を形成中』


今俺は、別の基地への攻撃を開始していた。

流石に端っこだけあって、練度が悪く、同時作戦でも俺の指揮で何とかなっている。


「全艦、敵陣に向け前進を開始」


ロスダーガ採掘戦闘前線基地攻撃艦隊は、レイピア級高速巡洋艦、グローサー級駆逐艦、アロー級フリゲート、ヘビーボンド級重爆撃艦、エクサシズム級遠距離駆逐艦の編隊である。

大型艦だらけだったので、足の速い艦隊で固めているのだ。


「大型艦の横を抜けろ! ナイトプライド、スピードウェーブ投下!」


ナイトプライド級司令旗艦が、艦隊全体にナノ粒子ウェーブを放つ。

粒子は船に纏わりつき、機関の出力を増幅させ速度を増加させる。


「レイピア、ヘビーボンドはミサイル攻撃にて敵艦を撃滅、上下に分散して各個ワープして離脱! プロトスカウターを残して、敵艦の再合流時にワープインを合わせろ」

『了解です。それから、カウエッガ補給線ですが』

「今どうなっている?」


指揮モニターが切り替わり、補給線分断戦の様子が映し出される。


「アルビオンを後退させろ、敵の装甲はアカツキⅢにやらせろ」

『了解』


SSCには、ステルスボンバー......隠密型爆撃艦というものが存在する。

アルビオン級戦艦はあくまで囮に過ぎない。

ステルスボンバーは、遮蔽装置を起動しながら敵艦隊に忍び寄り、ボムと呼ばれる特殊武装で相手を吹き飛ばす艦だ。


「敵基地上方から降下機動戦を仕掛けろ! ボムを射出後、ワープして離脱! 敵艦隊と前哨基地のアーマーの消失を確認後、アルビオン艦隊を戻し、砲撃で撃滅させる」

『了解、それからロスダーガで戦闘中の艦隊が、指示通りワープを完了させました』

「わかった、こちらも再合流を待って再度ワープで突入、敵の旗艦を狙って攻撃! 一定の効果が見られた後再度離脱し、敵艦が防御を固めた場合はエクサシズム級だけを艦隊の背後にワープさせ、遠距離砲撃で沈める! もし撤退もしくは分散隊形に移行した場合、レイピアとグローサー級駆逐艦で突撃し、艦列を崩しエクサシズム級で各個撃破する!」

『前哨基地が壊滅しました』

「........待ってくれ、とりあえず補給線の方は撤退させろ!」


.....頭が痛い。

そもそも、オーロラに任せられないから自分で指揮を執るって言った俺の因果応報だが。


『敵旗艦、マルチ隊形にて撤退準備を始めました!』

「集合して撤退か、こっちにこそステルスボンバーが欲しかったな....こっちも撤退する」


敵旗艦を潰せなかったのは残念だが、甚大な被害を出した敵はおそらく増援を呼ぶだろう。

そうしたら物資の運搬や輜重隊へのスモールギャングと、ありとあらゆる嫌がらせで疲弊させる。


『私には人間の感情はありませんが、皆殺しより残虐では?』

「いいだろ、憎んでくれればその分必死になって目の前が見えなくなる。大体向こうから先に仕掛けてきたのに、何だあの言いぐさ」


こっちが一方的に仕掛けてきたことになっていた。

もうどう考えても、こっちの技術や資源目当ての戦争だ。


「身に余る欲には代償を――――まぁ、国民に罪はないが、精々苦しんでもらう」

『”悪魔”というヤツですか?』

「こっちは別に技術や資源には困ってないしな。ただ蹂躙するより、二度と反抗できないようにその恐怖を命に、精神に、魂に、系譜に刻んでやる」


何が悲しくて、転移後も敵の襲撃に気を付けながら採掘をしなければいけないのか。


「もう二度と、お前に傷はつけさせない」


俺は、壁を...Noa-Tunの一部を撫で、呟いた。

…..ちょっとクサかったかもしれん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る