人魚にされた姫のお話
星 恵《ほしめぐま》
プロローグ
人魚にされた姫のお話
怖くないお話
決して本当では無い話
ガタゴト山のその先の泉の中には
小さな人魚が住んでいます。
何故わざわざこんな所に住んでいるのか、
それは人魚様がはるか昔に魔王に呪いをかけられてしまったから
魔王に攫われた姫が小さな人魚にされ、
うつくしいひめを
もう二度と王国に返さないように
魔物がうろつくへんぴな森の泉に
閉じ込められたのです。
姫の肌には鱗が
脚はおびれに
おまけにちいさく小さくされたので
誰もひめのこえに気づきません。
そうそう、肝心の魔王は
ぐーすかぐーすかいびきを立てて
ただ泉のそばでいつまでも眠っています。
もちろん、閉じ込められたと言っても
姫とて国に帰ったとしても助かる確証がないので
自由を求めて
不自由ながらも尾びれで地を這いながら
泉を後にするのでした。
魔王はそれでもぐーすかぐーすか
姫は音を立てすぎないように
そおっとそおっと
闇深いがたごと山に入っていくのでした。
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