第6話 『探検部』設立。


 あの、画像の発信以降、健斗は悪の帝王となった。

 学園全体のアイドルを脅し、自分の欲望のために、自身が主催した部活に勧誘したと思われている。本当のところは、ユナの計略によるもので、められたのだ。しかし、学園生徒はそうは思わなかった。健斗が、ユナはをおとしめ、けがしたと思い込んでいる。健斗の罪は、学園のアイドルを脅して部に勧誘しただけでなく、女子更衣室に侵入、アイドルの体操服の匂いをかいで、自分の欲求を満たした変態野郎と思われているのだった。

 男子だけでなく、女子生徒全体をも敵に回している。

 女子からは、けがれと呼ばれるている。

「凄い反響だな」田中は自分の席に座りぼやいた。

 健斗はクラスメイト全体から、敵視されていた。

「あの」ユナが健斗の席にやって来た。

 クラスの目があるので、びるように話した。

「今日は、どこに集まればいいの?」

 考える。集合場所など存在しない。何の集合場所だ。そもそも、自分が奉仕する身であるので、あれやこれや指示を出せる立場ではなかった。でも、気づく。ユナが集合場所の話を振っているのだから、場所を決めろという意味だった。

 そうか、部の集合場所を決めろと、指示されているのだ。

 めんどく臭い。表面上は、ユナの奴隷という立ち位置なのに、クラスメイトの前では、悪の帝王のようにふるまわねばらなかった。

「それくらい考えておいてくれよ!」

 何となく、悪役ぽいせりふを吐いておく。

「わ、わかりました……ご主人様」

 ユナはユナでこの状況を楽しんでいる。

 作戦は、田中と、鈴木にも伝わった。そして、遅れながら、気づいた。鈴木の能力を使えば、集合場所を決められるのではないか。健斗はみんなの見ているまえで、演じる。「おい、鈴木、俺たちに必要な場所を探しといてくれよ」考えた。「さもないと、ユナの体操服に、またいたずらしたり、女子更衣室に忍び込んでしまうかもしれないぞ!」

 クラスメイト達が、驚愕し、そして、鼻息荒くして詰め寄った。

 健斗はあらかじめ、ユナから渡されていた体操服をバックから取り出し、クラスメイト達の前で広げた。

「そ、それは?」クラスメイト達たちが声を上げる。

「これは、美少女ユナちゃんの体操着だ!」健斗は演技を続ける。「俺に逆らう者や、危害を加えようとしたらどうなると思う?」体操着に鼻を近づける。「匂いを嗅いで、自分のズボンの中に押し込んで、すぅはぁ、すぅはぁするぞ!」

 これによって、男子生徒を含め、詰めかけていた女子生徒を黙らせた。ユナはこうなる展開が読めていた。健斗は、その作戦に従ったまでだった。この作戦に必要だったのは、度胸だけだった。 なぜ、ここまでやるのか。それは、真面目だったからだ。約束は守るたちだった。

「あっちの方角だ!」鈴木は言った。

 指差す方向を見た。そこには、旧校舎があった。

 健斗は頷いた。「昼休み、あそこを調査しに向かう!」

 せいぜい、悪役ぽくふるまうのだった。




 昼休み。

 旧校舎に四人が集まった。

「ど、どうして旧校舎なんてものが存在るんだろう」鈴木は旧校舎の前で言った。「そもそも学園都市が出来てから、数年しか経ってないはずなのに」

「確かにね。でも、面白そうじゃじゃない」ユナは胸を張って扉の前に立った。とびらを押し開け、とびらが開いた。

 内部から冷気が噴き出して、体を冷やした。

「うううぅ」健斗は震えた。「本当に行くの?」

「行くに決まっているでしょう」ユナは指さした。「私は退屈していたのよ。丁度いい退屈しのぎが出来ていいじゃない」

 ユナは周りに人眼がないと、いつもの口調だった。

 四人は旧校舎に向かって入って行った。旧校舎は、古めかしかった。学園都市が出来たのは数年前のはずだ。少なく見積もっても十年は経過しているように見える。なぜか、貫禄が漂っていた。

 校舎の内部は電気が通っていな為、薄暗かった。

「ちょとこれ危なくない?」健斗は言った。

「大丈夫よ。これくらい」ユナは先頭に立ちどんどん進んだ。

 奥に一つだけ電機のついた部屋があった。四人は恐る恐る、その部屋の扉に手をかけた。

 そして、扉を引き開けた。すると、中は図書室になっていた。

 中央に幾つもテーブルがあり、椅子に少女が座っていた。

「幽霊じゃないよね?」健斗は話しかけた。

「あなたたち、ななな何の用ですか?」少女は言った。

「ここを調べに来たんだ」

「ここはダメです。ここはみんなが思ているような場所じゃないんです!」少女は必死に訴えた。

 少女を見た。これまた目鼻顔立ちの整った美人だった。背が低くて、ロリフェイス。そして、それを否定するようにそびえる巨乳があった。

「何を見ているですか!」

 健斗は目を反らした。

「ちょっと、私以外の女の子を見ているよ」ユナは健斗を揺さぶった。

「うう。苦しい」

 田中と鈴木も動揺しながら立ち尽くした。

「ここは私たち『探検部』が占拠するわ!」

「だ、ダメです」少女は首をぶんぶん振った。「ここは危険だから、ダメだと言っているじゃないですか」

 ユナは肩をすくませた。「私に逆らうと、おんな、子どもでも容赦しないわよ」

 すかさず田中と鈴木が突っ込む。「悪がれている!」

「健斗、どうにかして!」

 少女から事情を聴いた。すると、分かったことがあった。少女は、一年の花咲はなさきゆずと言った。彼女の能力は探知機能に優れていた。それによれば、この場所に危険反応があったら調べていたらしい。

「危険って?」

「それが分からないんです。どうやら何かわからない危険が潜んでいるようです」

「なかなかの能力もっているわね」ユナは言った。「あの子、確保して頂戴!」

 健斗は命令に従って、捕獲した。縄でしばり、椅子に座らせた。

「その能力、わたしのために使わない?」

「嫌です」ゆずは抵抗した。

「私に逆らうの?」

「逆らうとかないですぅ」

「そう」ユナは悪い笑みを浮かべた。「男性諸君。彼女いい体していると思わない?」

「いや、それは」

 田中と鈴木が生唾を飲んだ。その脇で、ユナが携帯を取り出した。

「健斗くん、彼女のブラウスのボタン外してくれる?」

「え」健斗はたじろいだ。「それは、犯罪では?」

「あなた、私に嘘つくの? 私に、服従するとか言ってなかった?」

「それはまぁ、そうだけど」

「やりなさい!」

 健斗は天を仰いでから、ユナの命令に従った。一年生の女の子はじたばたと抵抗しだが、縛られているうえ、男の腕力には敵わなかった。彼女は胸元の開いた写真を携帯で激写され、何枚かはずかしいポーズをさせられて、写真を撮られてしまった。そのポーズは、胸元を開かれた状態のまま、うるんだ瞳で、ウサギのポーズとか、目豹のポーズをさせられた。

「ううぅ。もう、お嫁に行けないです」ゆずは両手で顔を覆った。

「僕が責任取るよ」健斗は励ました。

「ほ、本当ですか」

「何、二人でいちゃついているのよ」ユナは健斗の頭を殴った。

「それで」ユナは言った。「どこに、危険が潜んでいるのよ!」

 しかし、ゆずには分からなかった。まだ能力値が足りなかった。

「俺に任せて」鈴木は言った。「おれが危険を探して見せる」

 だが、無理だった。旧校舎には、危険が幾つも存在し、特定は難しかった。

「ああ、ダメだ。ここは危険だらけだ。旧校舎には理科室がある。理科室には、骸骨がいこつの模型や、棚には怪しげな液体だって仕舞われているだろ。床だって滑って転びそうだし、俺の力じゃ特定するのは無理みたいだ」

「なるほどね」ユナは言った。「だったら、特大級の危険を探しなさい」

 鈴木は探査した。すると、見つけた。旧校舎の地下らしかった。

「見つけたわね。旧校舎に隠された脅威を見つけたわ。あとは、どこに何があるのかを見つけて、排除すれば完了ね」

「じゃあ、どうやって取り除くんだ?」

 健斗は首をふった。「まず、地下に脅威があると言ったけど、地下とは具体的にどのあるのか調べないと。例えば、地下室があるとか、それ以前に、地面中の奥深くにあるのかもしれないよね」

「もう少し調べる必要がありそうね」ユナは二度ほど頷いた。

 健斗は終了を告げた。休み時間は短かった。

「仕方ないあわね」ユナは頷いた。「今日はここまでにしましょう。それから、この部屋使いやすそうだから、とうめん私たちの部室にしましょう!」

「勝手にいいの?」

 ユナは満面の笑みで笑った。「言いの私がそう決めたんだものそれでいいのよ」

 健斗は頷いた。

 田中と鈴木も顔を見合わせて頷いた。

 ゆずだけは困惑顔だった。

 やがて、ゆずは縄を解かれ、解放された。別れ際、入部の用紙を渡され、それにサインさせられてから解散した。

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